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私は、はやる気持ちを抑えながら、いつもの病室のドアを開けた。 そのカーテンの先には……悟史くんが居る。 悟史くんは、ベッドの上に身だけを起こし、監督と話をしていた。 問診というやつだろう。 「あの、監督……入っていいでしょうか?」 「いいですよ、詩音さん」 その言葉だけで胸が跳ねた。 一歩一歩慎重に、悟史くんを驚かさないように…… 「さ、悟史くん……おはよう」 「……誰?」 少し、言葉に詰まる。 「詩音……園崎詩音、覚えてる?」 「……ああ、魅音の妹か」 なんとなく、記憶の中の悟史くんと違う。 でも、目の前のこの人は……間違いなく悟史くんだ。 「詩音さん、悟史くんは……少々記憶の混乱が見られますので、 今質問は控えてもらえますか? 記憶の程度を今分析していますので……」 監督が耳打ちした。 悟史くんはそれを不審に思うこともなく、 ただぼうっと空中を見つめていた。 「は、はい……また来ますね」 「ええ、ぜひ」 監督は笑顔で私を送り出してくれた。 本当は……私が今入ってきてはいけなかったのかもしれない。 そんな気持ちを胸の中に抑えつつ、 私は駆け出した。 次の日に診療所へ向かうと、 私がいつも同じ時間に来るのが分かっている監督が、 診療所の前で待ち構えていた。 「あ、詩音さん……あの、悪いんですが」 「まだ無理なんですね、いえいえ、悟史くんに会えるんですから……ちょっとの間ぐらい我慢しますとも」 「……はい、すみません」 今度は私が、監督を笑顔で診療所へと送った。 次の日も……その次の日も。 私は、一ヶ月待った。 その時間は、私が今まで待った時間よりもはるかに長く感じられた。 それでも悟史くんが居ると分かった後の期間は、 どこか寄りかかるところが無かった今までよりも充実していた。 だから…… 私は。 生まれて始めて、手首を切った。 「詩ぃちゃん……腕時計なんかしてたっけ?」 レナは、恐ろしいぐらい勘がいい子だ。 私を放課後の教室に呼びつけるなり、 そう言った。 「……ええ、確かに今日からしてますけど、 それが何か?」 「……ごめんね、ちょっと気になったの」 「何が……です?」 こちこちと、時計の針の音がうるさかった。 その音が、この長い静寂がそれほど長くないものだということを、 嫌というほど聞かせてくれる。 「あの、レナ……帰りますよ?」 「詩ぃちゃん、これ見て?」 いつも手首を曲げているレナが、 私にはっきりと、私の手についたのと同じものを見せてきた。 「……あのね、こんなことするのは、何かあったからだよね? レナ、相談に乗るよ?」 私は、恥ずかしさに頬を染めた。 一緒に戦い抜いた仲間じゃないか。 それなのに、私は自らを集団の少し外に置いていた。 悔しかった。 悟史くんに会えたのは……皆を信じたからなのに。 悔しくて悔しくて、手首を切った時には溢れなかったものが、 目からぽろぽろと零れ落ちる。 「し、詩ぃちゃん……」 レナは、おろおろとしつつも、ごく冷静にハンカチを差し出してくれた。 「悟史くんのこと?」 どきっとした。 この子の勘は……鋭すぎる。 「……って、言われたの」 「何?」 「近づくなって……うぇ、っ……うううう、うぁああああああ!!!」 レナはそんな取り乱した私を……包み込んでくれた。 「大丈夫だよ……悟史くん、居たんだよね? どこかに行ったんじゃないんだよね? じゃあ、大丈夫だよ?」 「うぇえ、うぅ、うぇえええ!!」 背中をぽんぽんと、レナは叩いてくれた。 「好きなだけ泣いて? でも、その後は笑お? だって、詩ぃちゃんは今幸せなんだもの。 意中の人が、ちょっと遠ざかっただけだから」 レナの言っている意味が……心の奥に染み渡った。 レナの好きな圭ちゃんは、お姉を選んだから。 「……男の子なんて、この世にいくらでも居るよ」 本当は、自分だって泣きたいはずなのに。 私は自分がまた恥ずかしくなって…… また泣いた。 「それに……女の子が好きな……女の子だって居るんだよ?」 突如として、私はより強く抱きしめられるのを感じた。 レナの鼓動がすぐ近くにあって、 この世に存在するあらゆる音より大きく聞こえた。 「詩ぃちゃん……私、一杯慰めたよね? だから……私も慰めてくれる?」 レナの手が、少しずつ下へと這っていく。 「れ、レナ……?」 私が信じられないものを見るかのような目でレナを見ると、 レナはびくっとして、すぐに手を引いた。 「ご、ごめ、わ、私……何してんだろ?」 「い、いいですよ……レナを、慰めますよ…… でも、私……どうしたらいいか」 「本当にいいの? 詩ぃちゃん?」 真っ赤になったレナの顔が、急にいとおしく感じた。 「……ぅん」 私は、机を掴んでお尻を突き出す形になった。 レナが後ろから、私の胸に手を回していた。 右手は胸に……左手は、太ももに。 「はっ……くっ、れ、レナぁ」 それだけの行為なのに、 私の腰は抜けそうになって、がくがくと震えていた。 「詩ぃちゃん、かぁいいよ」 レナが囁くように言った。 そのまま、みみたぶを噛んで来る。 「あぅっ!」 「詩ぃちゃん、感じやすいんだね……もう、大変なことになってるよ? もしかして、毎日毎日してたのかな?」 「れ、レナ……おじさんみたいです……はくっ!」 レナが首筋を撫でてきた。 もうどこを撫でられたって、 私の全ての皮膚は鋭敏になって、 下着がずれただけで体が痙攣するようになってしまった。 「じ、焦らさないでッ!」 「詩ぃちゃんずるいよ……私はまだ気持ちよくなってないのに」 そういうレナの目は、とろんとしていた。 「嘘でしょ、レナ……」 私は机に座り、レナを抱きしめた。 そのままレナとキスをする。 唇へのキスだ。 本で見たとおり、舌を突き出してみる。 レナはそれに応えて、舌を付き返してくれた。 「あむぅ……にゅ、ちゅりゅ」 声にならない声を、口の間から出す。 レナの顔は再び真っ赤になった。 すごく分かりやすい子だ。 「レナ……胸をいじったことはあります?」 「……ぅん」 「包皮を剥いたことは?」 「詩ぃちゃんも……おじさんみたいだよ?」 「質問に答えない悪い子は、全部やっちゃいます」 私は、口でレナの乳房を責めた。 右手はレナの左胸に。 左手はレナの秘所に。 「あっ、あぅ……はぅぅぅ、だっ、詩ぃちゃん、いっぺんにはダメェ!」 レナは……一瞬にしてイってしまった。 また私はキスをする。 レナが窒息しそうだったので、今度はすぐに口を離した。 はっ、はっと苦しそうに、レナは肩を上げ下げしていた。 「し、詩ぃちゃんにも……しないとね?」 レナは恐ろしい回復速度で、 私を押し倒した。 「あ、レッ!」 私はレナに犯される様に、机に仰向けに寝そべる形になった。 目に見えるのは教室の天井じゃなく、一面のレナの顔。 私はまた、唇を奪われていた。 しかも今度は、私が一方的に責め立てられている。 レナの無秩序とも言える、 痙攣するような手が、私の大事なところで震えていた。 口をふさがれているから、息をすることもままならない。 レナがやっと口を離してくれた。 私は大きく息を吸う。 「詩ぃちゃん、悟史くんに沙都子ちゃんのこと頼まれてたんだよね? 沙都子ちゃん、近頃詩ぃちゃんが全然かまってくれないって、 私に泣きついてたよ?」 レナは責める手を止め、今度は言葉で責めてきた。 「ぇ……あ、だ、だって……沙都子はもう大丈夫……」 「嘘だ」 レナがそう囁きゆっくりゆっくり、手を動かす。 私の中に指を挿入しようかどうか、迷っているように。 「詩ぃちゃんは沙都子ちゃんのこと……頼まれてたんでしょ?」 「は、はぃ……沙都子のこと頼まれてましたぁぁあ……あぅっ!」 突如として、レナが私の中に指を入れた。 「れ、レナぁ……」 突然の衝撃に……私は失禁してしまった。 「ご、ごめ……ぐすっ、うう」 「わ、私こそ……ごめん、考えもなしに嫌なこと言っちゃって……」 「ううん、私が悪いんです、悟史くんのことばっかり考えて、 沙都子のことをないがしろにしてたから…… 私が悪いんですぅぅぅ……」 「詩ぃちゃんは悪くないよ……私のほうが悪いもん。 失恋したからって……詩ぃちゃんに当たって…… 魅ぃちゃんに似てるからってね……」 私たちは、雑巾で後片付けをした。 なんだが自分が情けなくなってくる。 こんな年になって、おもらししてしまうなんて…… 「あ、あの、レナッ……その、今度は」 「今度は無いよ、詩ぃちゃん。 今度は私も、いい男の子を見つけるんだ」 レナはそういって、笑ってみせた。 「じゃ、じゃあ、その時はダブルデートしましょ、 レナなら絶対見つかる! 圭ちゃんなんかより、 万倍いい男が見つかるよ! だって……」 「あっ」 私は、レナの傷ついた手を取った。 「こんなに綺麗な手をしてる」 レナは、また赤面した。 リハビリ室は、突き当りを曲がったところ。 あらかじめ位置は把握していた。 そのドアを叩かず、私は元気に開けた。 「おっはよー、悟史くん! 監督!」 「あはは、元気ですねぇ、詩音さん」 「むぅ、詩音、ここは病院だよ?」 私は、あの後苦労しつつも、なんとか悟史くんと普通に接せるようになっていた。 「悟史くんも、元気ですねぇ、さっすが朝」 「ふぇ?」 悟史くんは、私の言葉に騙されて、下を向いた。 「ひっかかったー!」 「む、むぅ……」 いま思えば、悟史くんの変化なんて、一瞬のことだった。 私は悟史くんの外見を見て恋をしてたの? 違う。そうだよね? レナ? 私は、レナの醜いけども……お料理やお裁縫や、 その他の努力で何年も頑張った手を思い出した。 綺麗な手 ―完―
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前回 Miwotsukushi レナと魅音は結局帰ってこなかった。 知恵先生には梨花ちゃんが適当に話を繕い、午後の授業が開始。 当然半ば自習状態の学習に身が入るはずもなく、俺は窓の外と教室の扉を交互に目を配らせた。 小一時間首が百八十度の運動をし続けたので、若干首の根本に違和感がある。 「圭一、今日は一人で帰るのです」 終業のベルが鳴ってしまい、どうしたものかとうろたえていると、梨花ちゃんの助け船がやってきた。 探すな、とレナに言われていることもあり、俺は大人しく家路に着くことにする。 沙都子は少しだけ悲しい顔をしながら俺の顔を見据えたが、俺が頭をぐしゃぐしゃに撫でてやると顔を和らげた。 俺がずっと押し黙って、レナも魅音も居ないわけだから、沙都子には今日はつまらない日だったのだろう。 最低限俺は大丈夫だ、と言うことを、俺は頭を撫でてやることで表現した。 「圭一さん、明日は魅音さんを泣かせてはいけませんことよ」 年下から説教を喰らってしまい俺は苦笑してしまったが、梨花ちゃんが真剣な眼差しで俺を直視していたので、敬礼の合図で応える。 それを良しとした所で、梨花ちゃんと沙都子は夏真っ盛りの太陽の方向へと走り出していった。 俺もそんな二人を視界に入れながら歩き出す。 校門……とは呼ばれてないが、道と敷地とを隔てる場所まで来て、一度校舎の方に体を返した。 緑色の髪をした委員長が、置いてきぼりを喰らったことに腹を立てながら走ってくるじゃないかと。 ちょっとした希望めいたものに体が反応して、俺は魅音の姿を一通り探してみた。 だが俺の視界には元気よく走り回る男の子たちの姿しか確認できない。 謝るのは明日になりそうだな、とぼやきつつ、俺は再度自宅へと足を踏み出した。 「やっぱり遭遇率が異常に高いと思うんだ、俺は」 「ふっふー、神様の赤い糸が圭ちゃんには見えませんかー?」 勘弁してくれ、とばかりに俺は両手で降参のポーズをする。 目の前には明らかに雛見沢では異端の黒塗り、しかも恐らくは外国製の高級車だ。 今日の問題の原因とも言うべき詩音が、俺が帰りだして約三分の所で会う羽目になったのは、もはや偶然とは言わないだろう。 「昼休み来なかっただろ……、沙都子心配してたぜ」 病気でわざわざこっちの診療所まで来たのか、と直感が走ったが、顔色を見る限りそうでもなさそうである。 体調を崩したわけでもないのに、しかも俺の前で元気そうな振る舞いをすることが、逆に不安を募らせる。 こいつはきっと……、また無理をしている。 根拠はないけど、その根拠のなさだからこそ信じれるものがある。 第六感だから見抜けるモノがある。 もちろんそれだけじゃ生きていけないんだけど、逆に理屈だけじゃ俺らは【進めなかったんだ】。 この初夏を最高の仲間で迎えられたのは、絶対に社会の大人の頭では出来ないこと。 全員の意志が結晶して打ち破った輪廻からの脱出。 梨花ちゃんの言っていた言葉が思い出される。 「今日うちの学校期末試験だったんです。さすがに留年はまずいんで、今日は行けませんでした」 苦笑しながら詩音が俺に応える。 不自然じゃない。筋が通る理由だ。魅音と違っていつもの表情と全く同じ顔である。 だからこそ、その不自然の無さが不安を駆り立てる。 「それで詩音、今日はどうしてこんな時間に来たんだ?」 思い当たる節はあるものの、俺はあえて詩音に理由をしゃべらせた。 こちらで勝手に選択肢を設けてしまっては、詩音の胸の内が読みにくくなると考えたからだ。 「診療所です」 一度俺の中で否定された可能性。それを詩音は口にした。 俺は詩音に、具合が悪いのかと問うたが、詩音は即答せずに俺の目を見続けた。 まるで何か値踏みしているような、疑り深い瞳で俺の顔をえぐる。 「圭ちゃんは……私をどう見ていますか?」 「へ?」 素っ頓狂な声を出してもおかしくない詩音の質問だ。 確かに数秒前までは、詩音が雛見沢が来た理由の会話だったはずなのだが。 ここで突然のボディーブローに、しばらくパニックになる。 「に……濁すなよ、詩音」 「濁してるのは圭ちゃんです。大事な質問なんです。応えてください」 更に鋭く切り返してきたことで、俺は完全に面食らった。 まさかこんな状況で告白タイムを作って、俺の恥を増やすわけでもあるまい。 何よりも詩音の表情が真剣で、今日幾重の起きたことが重なって、今が大きな分岐点であることを想起させる。 意図は読めない。考えたくはないが、本当に詩音が俺を茶化してるだけなのかもしれない。 しかし、もし【そうじゃなかったら】の比重を考えれば、俺は真面目に応えるしかないだろう。 俺は顎に手を置いて、自分が今考えているのを詩音にアピールした。 詩音も俺に追い打ちはかけず、俺が口を開くのを待つ。 「詩音は俺にとって最高の仲間だよ」 いつも俺が、部活のメンバーについて聞かれた時に言う定型句。 だがそれは同時にいつも思っていること。 いつも思っているから確信を込められる。 いつも実感しているから本人にも言える。 それが最善の言葉なのかは分からないが、唯一の自分に正直な答。 俺が口を閉じた後に、詩音が悲しそうな表情に変わったのは、気のせいではないように思えた。 やはり、が的中してしまった。 少しだけ希望をかけてしまった自分を悔やむ。 反対にただ本人の口から聞いて確定してしまっただけ。 私は圭ちゃんにとって仲間以上の存在ではないんだって。 テストの出来が悪いなー、と思って返ってきたテストが赤点だったのに似てる。 ただそのテストの内容が【私自身】なだけ。 それも圭ちゃんは私に赤点を与えたわけではない。 最高の仲間……。きっとテストでは、合格点どころか八十や九十を超えるベストの成績だ。 クラスや学年でも数人にしか与えられない、誇るべき数字。 でも私が欲しかったのは百点だった。 私はお姉たちのように常に生活を共にしているわけでもない。 贅沢な悩みであることが、今の比喩で分かるというのに。 それなのに私は圭ちゃんに言って欲しかったんだ。 お前は俺にとって一番大事な奴だ 呪われた私にはあまりにも高望みのその言葉。 自分で気付くことも出来ず、お姉の前で吐露して初めて気付いた感情だと言うのに。 私には資格と言えるものが一つも揃っていないのに。 何で私は求めてしまうんだろう。 人一倍賢い気でいた数年前の私はどこに行ったんだろう。 いつから一人すら愛する資格がないくせに、違う人を愛するまで欲張りとなったんだろう。 努力しなきゃ、百点なんて取れるはずがないのに。 「葛西、ごめん出して」 今圭ちゃんの前に居ることが耐えられなくなって、私は逃げようと葛西に告げた。 葛西は無言で私に頷き、ハンドルに手をかける。 このままここに居ては、必ず無様な姿を見せてしまうことになる。 それは会話を有耶無耶にして逃げることに比べれば、遙かに私にとって許し難いことだった。 「お……おい、詩音、待て!」 開いていた窓から縁を掴んで、圭ちゃんは静止を促した。 瞬間、止めようかと口を開きかけたが、ここで止めても自分の首を絞めるだけなので、私は口を結んだ。 速度はどんどん上がっていき、エンジンの轟音が車内に響くようになる。 「詩音さん、前原さんが……」 葛西が言うものだから後ろを振り向いたが、ぞっとした。 既にこの車は相当のスピードが出ているのにも関わらず、窓の所には未だ圭ちゃんの手がかかっていたのだ。 こちらを見つめながら、何かを告げるように口を開いている。 いくら対向から車が来ないとは言え、この道は舗装などされていない。 足を取られて転倒しては、これだけの速度だ。下手をすれば骨の保障だって出来ない。 今走っている最中でさえ、車輪に足を巻き込まれたらミンチになってしまうだろう。 「け……圭ちゃん! 葛西、止めて!」 半ば急ブレーキの停止に、圭ちゃんは勢いが余って地べたに転がり込んでしまった。 ブレーキがたてた砂埃に咳き込みながら、私はドアを開けて圭ちゃんに近づいた。 擦りむけた膝から、次第に朱色の血がにじみ出してくる。 「ザマぁねえな、こりゃ」 汚れてしまった短パンやTシャツを払いながら、圭ちゃんは私に笑ってみせる。 圭ちゃんにこうなった責任は欠片すらないのに、無垢な表情を私へと向ける。 あまりにも今の私には痛々しいはずの笑顔。自らの罪悪感が掻き立てられる天使の悪戯。 それなのに圭ちゃんの笑顔が温め、癒し、染み渡る。 無知の子供が浮かべるとは正反対のもの。すべてを背負い、抱き、許す女神に相応しいものじゃないか。 「け……けぃちゃぁん…………」 発音もままならなく圭ちゃんの胸に私は沈む。 圭ちゃんのことでもう泣くことはしないと決めた。だが一度堰を切った涙が止まるはずがない。 寄りかかるように圭ちゃんの胸に自分の身を預け、道のど真ん中で私は園崎として許されない姿をさらけ出した。 ただの詩音と言う少女が、一人の男の子の胸で涙を流す。 「お……おい、どうしちゃったんだよ……」 会話を中断させ、車を発進させ、あまつさえ泣き出した私に、圭ちゃんは戸惑っているようだ。 別に圭ちゃんは分かる必要はない。 居るだけで私を引っ張ってくれるヒト。 だから……もう少しだけワガママさせてください。 圭ちゃんの手が肩に置かれる。二三の言葉を掛けられたがよく聞こえない。 ここで一度私の記憶は分断された。 気付いたらそこは……、って幼稚な小説じゃあるまいし。と私は自虐した。 笑えないのが『幼稚な』と言う修飾が、雛見沢と言う『一人が聞いたら千人知る』村のど真ん中で泣きわめいた私に当てはまることだ。 畜生、二度とあんなことしてたまるもんか。 意味も分からずムカついたので圭ちゃんに鋭い視線を送る。 びくっと体を竦めた圭ちゃんが可愛らしい。 『この人を頼りにしてます!』って誰かに言ったら、絶対笑われる。 場所は私のマンション。どこかの医療機関ではない。 多分葛西に道を引き返してもらって、小一時間をかけ部屋に戻ったのだろう。 その葛西は「私はこれから所用がありますので部屋を三時間ほどは離れます。どうぞ、ごゆっくり」と、【三時間】を強調し消えてしまった。 これが頭に来たり、エロオヤジと株が暴落することはないのは、日頃の行動の賜物だろう。 どこぞの茜とか言う三十路まっさかりの鬼が言ったら、私自身何しでかすか分からない。 並んで座っているベッドが軋む。 私はかなり心の中で葛藤してるからよく気付かなかったが、圭ちゃんも黙っている為無機質な音ばかりが部屋に響く。 こうなると私は切り出すのが難しくなる。妙に苦手なのだ、こう言う空気が。 しかし誘ったのは私なのだし、用があるのも私だ。 いつまでも口を開かないわけにもいかないだろう。 「大丈夫ですか、膝……」 絆創膏が二枚貼られた圭ちゃんの膝。傷を洗った時に見た限り浅くはなかった。 消毒し終わったとは言え、痛むはずの私が傷つけた膝。 「んー? 男にはこんなの当たり前だぜ。勲章ってやつさ」 肌の白さ、華奢とも表現すべき線の細さから推測する辺り、こっちに来る前はかなりインドアだったと思うのだが。 たったの一、二ヶ月でこんなにも意識改革するのだから、本当に雛見沢は恐ろしい。 「んで、いつまで世間話すればいいんだ、俺は?」 胸が大きく鼓動した。 不意打ち反則と突っ込みたいぐらい、圭ちゃんは会話の中で核心に触れてきた。 そりゃあ、こんな不自然なシチュエーションもないか……と後悔する。 「敵いませんねぇ、圭ちゃんには」 茶化す私の更に奥を見る圭ちゃん。 じっと動かない視線は、どこか竜宮レナを連想させる。オンオフの激しい辺りも、共通項だろう。 「悟史くんことで、ちょっと話がありましてね」 「悟史……、あぁ詩音のカレシか?」 デリカシーねぇなおめえは、圭一。 せめて沙都子の兄と表現して欲しかった。 「入江診療所がただの医療機関じゃないことは、圭ちゃん分かりましたよね」 「ん……、あぁ。鷹野さんの……その……隠れ蓑みたいなもんだったんだろ」 一種のタヴーを私は犯している。先の一件に触れるのは、憐憫と後悔しか生まない。 結果だけ見ればまだ成功したのだろう。 だが確かにあの事件と関連して、人が既に死んでいたり、傷を負った人もいる。 身体的にも精神的にも蝕まれたのだ。 だから私たちは未来だけに目を向けることにした。 過去は既に自分の中で消化し、糧としてしたはずだった。 だから圭ちゃんの返答がおぼつかないのも納得が出来る。 「隠れ蓑……と言うのはちょっと違います。監督はあの病気に真剣に取り組んでましたから」 そう、隠れ蓑は正鵠を射てはいない。鷹野三四があくまでも利用しただけ。 監督の過去数年間は、確かに雛見沢症候群の治療に注がれていた。 その【治療】と言う単語が……、今重要なことだ。 「悟史くんは……、そこに居ます」 圭ちゃんの表情が凍った。きっとそれはカレシの悟史としてではなく、兄としての悟史、つまり沙都子を意識してのものだ。 今すぐにでも教えようと高ぶった気持ちに相反し、恐らく圭ちゃんは冷静に分析している。 私は沙都子の前で良き姉として振る舞い、事実私自身もそのつもりで生活している。 その私が沙都子に教えていないのなら……確かに理由が存在する。 レナほどではないにしても、圭ちゃんは意外と勘もさることながら推理力がある。 きっと私が再び口を開かない限り、圭ちゃんは稚拙な行動をとらないだろう。 「今、悟史くんは病気なんです。沙都子にも教えることができな」 「雛見沢症候群だな」 私が口を開いている途中で、圭ちゃんが介入するのは珍しいことだ。 それに【雛見沢症候群】と言う名称を知っていたことにも、幾ばくか驚かせざるをえない。 「……そうです。だから今は、沙都子に会わせてあげることは出来ません」 被害妄想が幾度も幾度も累乗されていく、精神疾患の特異型。 すべてが。自分も含めたすべてが信じられなくなる、無色無味無臭の敵を作り出す病気。 どんなに敵を追い払おうとしても、存在すらしてないモノをどう殺せるのだ。 結局矛先は身近な人に伸び、殺戮が発生する。 記憶ではなく記録が、そう私に忠告している。 「詩音はなんで知ってるんだ?」 「え?」 確かに、私が知っているべき理由などどこにも存在しない。 「それは本当偶然ですよ。葛西たちとドンパチした時に、監督から教えられただけです」 実際は、それこそ私が雛見沢症候群を発症したように監督に食い付いたのだが、あの場面は監督に完全に圧倒されて事なきを得た。 監督なら悟史くんを任せられる確信が持てた。だから今も私は監督との約束を守っている。 私自身触れたい欲求を抑え、沙都子に報告したい衝動も制していた。 「遠けりゃ救われる……ってのはこのことか……」 独り言のように呟いた圭ちゃんの顔を私は捉える。 覚えていた……。圭ちゃんにとっては、ただの日常の一こまでしかない会話を、圭ちゃんは覚えていてくれた。 否……、否。それこそ例の病気の逆だ。短絡に考えすぎている。 不自然なも会話ほど記憶はしやすいものだ。時間的に考えても充分記憶が残っていてもおかしくはない。 ただ……それが分かっていても、【私】が記憶されていたことが嬉しい。 「辛いだろうな……」 一転、私の心に不安が染み込んでくる。あくまでも私と悟史くんとの関係を意識しての憐れみ。 あぁ、その先はきっと聞いてはいけないこと。 それを耳にしては、私の再び芽吹いた感情が摘まれてしまう。 「……なぜですか?」 だけど私は応じる。 どんな結果、十の内八九は望まない終わりになるだろうけど、ケリはつけるって決めたんだから。 結末がないと納得できないし、終わらないと始めることも出来ないだろう? 「詩音、悟史のこと好きなんだろ?」 当然、八九が当たった。私自身がそう言ったのだ。 好きな人が居る。それは悟史。遠ければ救われるほど、すぐそこにいる想い人。 圭ちゃんには言わなかったものの、私が悟史くんのために払った代償は大きい。 自身が負った爪の痛み。葛西や叔父さんにも迷惑を掛けた責任。 園崎家としての意志に反し、存在を認めてもらえただけでも喜ぶべき隷属民のような私。 求めちゃいけない……、卑下されて当然のモノ。 ねぇ……、でもやっぱりね。 私じゃ駄目かな。人並みに愛を欲しいって思っちゃ、叱られるかな。 この歳でこんなことを言うのも、ちょっと大人ぶってるように見えるだけだけど。 私は……圭ちゃんのことが何よりも大好きです。 「違います」 小さくもはっきりとした発音は、俺の耳にしっかりと届いていた。 あれ、確か詩音は悟史のことが大好きで、ずっと帰りを待っている、と聞かされていたのだが。 恥ずかしくて誤魔化している状況でもない。 断定と強い意志を持ち、詩音は俺の質問を否定する。 詩音を見ると、まず手が震えているのが目に入った。 首筋には微かな汗が浮かび、唇を噛み締めているのが続いて確認できた。 明らかに正常ではない。体がはっきりと異常のサインを、外部へと表している。 「詩音……、お前大丈夫か。具合良くないんじゃないの?」 「私はっ…………!」 詩音の顔が、俺の方へと正対する。 目尻に浮かぶ恐らく涙が、唇を噛んでいる理由を示していた。 「圭ちゃんが……っ」 え? 「圭ちゃ……、圭ちゃんが好きなんです!」 時が止まった。ってあるわけないんだけど。 まるで俺と詩音を包む空間だけが停止したように、俺たちはフリーズした。 まず修復すべきは脳の回路だ。一度に大量の情報が行き交いすぎて、パンクしちまっている。 整理だ。まず落ち着いて整理するんだ、前原圭一。 詩音は、悟史が好きって言うことを否定して、かつ『圭ちゃんが好き』と加えた。 文脈を見てどうだ? 本当に悟史が好きってこと自体を否定したのか? …………いや、確かにそうだ。それ以外は考えられない。 ならば、その俺のことが好きってのが、冗句と言うのはどうだ。 恥ずかしくて逸らしていた詩音の顔を再び視界に映す。 俺が顔を背けていても、詩音は俺の横顔をずっと見つめていたようだ。 俺に宣言した時と同じ顔。 真剣で、感情を抑え、なにか不安を抱えている、冗句など入り込める場所がないような顔。 いくら茶化すのが得意な詩音とは言え、この顔は嘘と言えるはずがなかった。 ……じゃあ、やはり俺を好き……って言うのは本当なのか? 鈍感鈍感と冷やかされつつも、また俺は気付くことができなかったのか。 いや、さすがに今回は明らかに俺の鈍感さとは無関係だ。 考えてもみろ。よく遊んでいた友達の妹に告白される、なんてどこぞの妄想ストーリーだ。 一応妄想…………、御都合的自主作成脳内再生にはそれなりのこだわりがある俺でも、まだまだ未知の領域だ。 くそぅ、動揺してるなぁ。動揺している。 これが迫真の演技で騙しているとしたら、もう完全勝利だぜ、詩音。 そんな一縷の可能性さえ打ち消すかのように、か細い声で詩音が俺に語りかける。 「大好きです……」 詩音の躰が俺に向かってきた。 腰に腕が回り、胸に詩音の頭の感触。足は横に流し、俺の胸から腹の辺りにうずめる形で、俺と詩音は接触している。 反則だ。こんな温もりを直に感じて、ときめかない少年が居ないとでも言うのか。 手の平から自然に浮かんだ汗を、一度ズボンの側面で拭いてから、詩音の首に俺も手を回す。 髪の上から回した為、柔らかい質感が手の平中に伝わった。 詩音の後頭部に手を添える形で、再び静止してしまった俺。 なにゆえ未経験の為、この先どうすればいいか全く持って分からない。 詩音……なんで俺なんだ? と、俺は聞こうとした。しかしすぐにそれを噛み締める。 こんな覚悟めいた表情で言う人に対して、かける台詞などではない。 詩音は俺の事が好き。 実際今でも信じられない。どう言う過程で俺の事を好いたのか、ジョセイではない俺には理解できない。 だが、それを理由に彼女の覚悟を卑下していいものか。 「詩音、顔を上げてくれるか」 俺は詩音から手を離し、話し合えるような状況を作る。 首だけ上げて、男性が好むであろう三大ポーズの一角を担うこの悩殺ポーズを、どうにか噛み殺す。 「俺はさ、詩音にとって、多分一番の答は……言えないと思う」 無言の応答が詩音から放たれる。 「この場でお前を好きって言えれば良いけど。やっぱり詩音は【仲間】なんだよ」 背けることのない詩音の視線。俺も決して詩音から目を離そうとはしない。 「詩音が俺をそう思ってくれる事は、素直に嬉しい。だけど、もう少し待ってくれないかな」 肩に一度手を置いてから、今度は抱きしめる格好で俺は腕を回す。 俺が決してその場逃れの為についた戯言ではない証拠。信頼ほしさに俺の胸に、詩音を寄らせた。 詩音は抵抗する事もなく、ただ俺にされるがままになっている。 数分そのままで俺たちは動くことはなかった。 カチコチと鳴る時計の音も気にならなかったし、興宮では珍しくない自動車の音も一種のBGMだ。 詩音が吐息する度に温くなる俺の胸から、柔らかな感触が消える。 再び無言で見つめ合う格好となって、何度も繰り返した重い空気がただただ沈滞する。 「お腹空きましたよね」 打破した言葉は、あまりにも軽い調子で放たれた。 まるでこの十数分が、空間の狭間に引きずり込まれた如く、詩音の表情は明るかった。 意図は読めない。詩音がこうも感情を押し殺し、俺に笑顔を見せる理由が。 分からないと言う事が分かっても、俺は何もするべき行動が見当たらない。 彼女の精神力は、俺の頭脳では到底理解まで達し得ない。 悔やむ。ただ俺の意志を突きつけ、更なる我慢を強いる俺の弱さが、ただただ憎たらしい。 包丁で指の皮を切るのも、横っ腹に刺し通すのも、どちらも傷を付ける事に変わりないのに。 俺は腹を自らの手で刺すのが嫌だから、長らく蓄積する疼きを選択したのだ。 自分の手を汚さない俺は良いかもしれない。だけど彼女が苦しむのは変わりないと言うのに……! 歯が軋む。強く握りすぎた手が痛い。頭へと血流が激しくなる。 こんなもの、こんなもの、こんなもの、こんなもの、こんなもの……! 全てを抱えてあげれない俺を呪う。潔癖を是が非でも獲得しようとする思念を、ただただ俺は圧殺しようとした。 流し台に数枚の皿が置かれ、詩音が水道水で軽く汚れを流す。 ある程度流すと水を止め、再びソファへと戻ってきた。 二人は食事中は全くの無言。お互いに話を切り出せる規格外の強さがあるはずもなく、ただただ箸を動かした。 食事が終わり再び数十分前の状態に戻っても、この空気が変わるはずがない。 圭一の心中では、今この場をどう切り抜けるか、について頭がいっぱいだった。 自然な感じで、本当にこの部屋を離れて良いのだろうか、と疑心する。 第三者的な目。感情をシャットアウトし、あくまでも状況のみで判断するならば、これ以上詩音のマンションに居る理由など無い。 だが席を立つことが、同時に詩音との二重の意味での別れを意味するように思え、足が竦む。 生き地獄とはまさにこの事だった。 「じゃあ、俺雛見沢に戻るな……」 意を決して切り出したのは、何分いや何十分後だったのだろう。 時間の感覚すら狂うほど、無言の密室は人間にとって害だ。 今まで吸った、濁った空気をすべて吐き出すように圭一は告げる。 隣に座る少女の顔は見ない。見たら、絶対また躊躇ってしまう。 「こんな暗いのにですか……?」 その声で窓に目をやると、確かに外は暗い。 いや、雛見沢に比べ電光の明るさを加算してのこの暗さであるから、相当な時刻となっているに違いない。 案の定、時計の針は口元の髭のように時を示している。 つまり七時二十分。雛見沢に戻れる交通手段は、夕方のバスのみなので帰宅手段は徒歩しかない。 「タクシーでこっからどれくらい?」 「圭ちゃんのお財布で無理なことは分かりますね」 詩音のシニカルな笑い声に、思わず圭一は苦笑してしまった。 油断と言うか、全くもって帰る時間を計画せずに食事を馳走になっていたのだ。 こう言う行き当たりばったりが、自分を罰ゲームの常連から抜けられない要因なんだろうな、と落胆する。 「どうしますか……本当に。圭ちゃんのご両親って、門限にはうるさい方でしたっけ」 「まぁこの歳だし、多少夜になっても大丈夫だけどよ」 そうは言いつつも、朝帰りが許されるほど圭一の両親は無責任ではない。 少なくとも今、電話の一本を寄こすのが礼儀だろうが、どう説明しようか見当が付かなかった。 「あ……」 詩音が何かに気付いたような素振りを見せたが慌てて隠す。 だがお互い発する言葉もない状況。その静寂で起きた声だったため、詩音の呟きは圭一の脳へとしっかり伝達されていた。 「あれ、詩音どーしたよ」 続きがなかなか出てこないのを見て、圭一のトドメの一言が入る。誤魔化すわけにもいかず、詩音は諦めて口を開く。 「このまま泊まっちゃったりー、とかどーなんでしょうね」 軽い笑い声のような口調。口元に人差し指を当てて、苦笑しながら喋る姿はよく詩音がとるモーションであった。 一方の圭一は、鼻腔から迫り来る何やら赤い液体を堪えつつ、苦笑を返すしかなかった。 友達の家に泊まる。本来学生にとっては当たり前のこと。 数人で各々が食料や娯楽物を持ち寄り、布団は敷くものの結局不眠で朝を迎える、そんな楽しい一時。 圭一自身は小学時代は親が許さない、中学時代はノートと参考書が友達なこともあり経験はなかったが、至極『お泊まり』が普通の行為であることは分かる。 まず一対一。ここにも突っ込みを入れたい所だがとりあえず自重。まぁ仲が余程良ければするのかもしれない。 続いて保護者の不在。これに関しても夜更かしを大っぴらに行える、など子供特有の期待感が増長される。この問題もとりあえずスルーだ。 最後に泊まる相手が異性であること。問題だ。問題すぎる。 いつぞやの芸人が出てた、中国語だったかの映画タイトルを使うわけにはいかない。 さすがに圭一でも、自分が中学生となり『性』を意識しているのを自覚している。 いつの間にか自分で欲を処理することも覚えた。固有の嗜好に関しても、ノート一冊が埋まるほど極めた。 そんな圭一に同世代の女子と、一夜を過ごすのは考えちゃいけない妄想の域ですらある。 気付けば、先刻スルーしていた問題が『相手が異性』と言う条件下で、絶大なる影響力を生んでいる。 「ま……まずいよ、そりゃ。……ん……まずいよ」 反復する辺りに自身の狼狽を感じつつ、圭一は顔を背けた。 まったくもって下がらない体温を気にしつつも、圭一は他の解決策を思考する。 「泊まるのはなぁ……、ぐぅ……」 唸ってみてもアイディアが突沸するはずもなく、着実な時の経過だけが部屋に流れた。 とりあえず電話だけはしよう、詩音の提案を圭一は飲み、ソファの横に設置されていた受話器を取る。 既に慣れた六桁の電話番号をプッシュし、無機質なコール音に耳を傾ける。 六回、七回、八回。出ない。父はアトリエに篭もりっぱなしなので当然だが、母親までもが出ないことに圭一は違和感を覚えた。 この時間の外出があるはずもない。もう一度かけ直しても、前原家の居間にただただ音が響くだけだろう。 「ビンゴーってやつなんだろうな」 自嘲通り越して呆れに達した独白が、虚しく詩音のマンションに響く。 偶然が重なったとしか言いようがない。多重事故も良い所だ。どの道圭一は前原家に入ることが出来なかったのだった。 圭一が電話機に向けてた体を、詩音の方へと戻す。自然目が合う形になり、視線での会話が展開された。 どうします? どうするって…… 真面目に困った感……じゃないですか やっぱ……ここに泊まるしか……なぁ…… 意識は当然してないだろうが、互いに詩音の提案を呑む他、圭一が暖かい部屋と布団で寝られる可能性は低そうであった。 八方も塞がったら、その場に居座る以外どうすればいいのだ。圭一は自棄になって、無人のソファへと寝転がった。 期待した言えば嘘になる。 あからさまに圭一は詩音の部屋の宿泊を拒んだとは言え、いざ二人っきりとなれば風呂の時などに下着姿でも拝ませてもらえるのでは、などと煩悩が働いた。 この助平衛が、と突っ込んだものの、実際詩音が風呂に入る時は、詩音の部屋へと軟禁されたのでイベントはなし。 加えて、部屋の物の位置がずれている箇所を発見されれば、手に穴が空くとの事だったので、圭一は数十分のフリーズを強制された。 別にくつろいでいる以上のことをしなければ結構なのだが『穴が空く』と言うのが妙にリアルで、圭一は萎縮していた。 何故リアルに感じたかは、生涯圭一は気付かないに違いない。世の中知らない方が仏を見る小話もある。 立ち替わるように圭一が風呂に入り、真っ白なバスタオルで体を拭く。 園崎家の管理するホテルから流れた物、と詩音は圭一に説明しており、とにかく生理用品を中心に事困ることはないらしい。 本家、魅音の住むあの豪邸を想像すれば、別に生理用品だけに限らず、資金で困ることはなさそうだが、と圭一は考える。 特別な事情を知らない圭一にとっては、当然の疑問であったが、詩音なりのプライドと片づけてドライヤーのスイッチを切った。 下着は多少不衛生だが風呂を浴びる前と同じ物。 圭一はTシャツなども同様に自分の物であるのを要求したが、土埃の汚い服で寝ることは許されないと却下された。 そして目の前に用意された桃色のTシャツと、チェックの入った同じく桃色のパジャマのアンダー。 これはしばらくはネタにされるな、とため息をついて、女物の服装でも袖を通せてしまう自分の貧弱な体にもう一度息を吐いた。 詩音からファンシーな姿と化した己を良いだけ笑われた圭一は、さっさと就寝することを提案した。 「カメラでも用意しておけば良かったですねぇ」と微笑む詩音を半ばスルーして、自分の寝る場所を見回す。 十数分レディーの寝る場所と美容との関係について熱く語られた圭一は、ソファで一夜を過ごすことを承諾した。 十一時を少し過ぎた辺り。興宮のマンションのとある一室から、光が消えた。 図太い神経を持っていれば、もう少し楽に寝れたと思う。 慣れない寝場所のことではなく、お気に入りの枕がないことでもなく、やはり先ほどの告白が引っかかっていた。 成り行きで泊まることにはなったが、正直ここから逃げ出してしまいたい気持ちがある。 俺が全く考えていなかったこと。知らぬ間に、また俺は人を勝手に不幸とさせていたのだろうか。 考えていなかった、と言うのは語弊が生じている。考えようとしなかった、が適切だろう。 友達だから、とすぐに俺は彼女の苦悩を思案することに、終止符を打っていた。 全く変化がなかったことは無いはずだ。俺への対応に詩音がいつも通りを振る舞えるほど、彼女は強くない。 硝子細工のように透き通った心を持ち、繊細な装飾がなされ、かつ割れてしまいやすい。 それを俺はなんて無下に扱ってしまったのだろう。やはり俺には、彼女の告白に肯定する資格は有していない。 逃げ出したい、と問題から逃避しようとする愚か者に、彼女の想いを背負えるものか。 圭ちゃんの笑顔が、妙に心へダメージを与えた。 私へ少しでも傷を付けないようとする、圭ちゃんの優しさに胸が痛んだ。 恋がこんなに人を酔わせるもので、愛がこんなに絶望を与えることを私は想像できたはずだ。 前例。一度経験した【終わり】を、私は何故また実感しようとしたのだろう。 圭ちゃんのことは少なからず私も理解していたはずだ。 園崎魅音のあれほど分かりやすい恋慕から来る仕草さえ見逃す彼に、幸福な結末を望むことは私の責任である。 友達でいることで充分喜びを提供する彼を占有するのは、あまりにも儘が過ぎるのか。 カチン、と音が鳴った気がする。 そこでお前は終止符を打つのか、と誰かが語りかけた気がする。 硝子細工のように純真な彼を、誰にも染色されない意志を持つ彼を、無鉄砲で危なっかしい彼を。 諦めるのか? 終わりにするのか? 逃げ出してしまうのか? 「嫌だ」 失うのは嫌だ。遠慮をしてしまうのは嫌だ。泣くのは嫌だ。独りは嫌だ。寒いのは嫌だ。眺めるのは嫌だ。離れるのは嫌だ。痛むのは嫌だ。放っておかれるのは嫌だ。壊れるのは嫌だ。 嫌いに なル の が 嫌ダ。 ザーッとノイズのような音が脳内に響いた。 頭の中で様々な何かが、現れ、消えて、創られ、爆ぜた。 ………………………… 「こんなに好きなのになぁ」 頬を伝っていた涙をシーツでぬぐい、私は身を起こした。 ベッドから離れて冷めていく体。部屋の扉を開けて、カーテンから漏れる薄い光。ソファの上で横たわる一人の少年。 私は終止符を打つことはしなかった。 扉が無機質に立てた音で、圭一は微睡みから解放されて意識を戻した。 考える意味もなく、音の犯人は詩音であることを知覚。そして疑う間もなく再び瞳を閉じた。 そこで気付く。気配が自分の後ろにぴたりと止まった。そして膝をたたむ布きれのこすれる微かな音。 圭一の体にかかっていた毛布を詩音が静かにとり、居間の僅かな冷気が圭一の背中に伝わる。 すぐに詩音の手が横となっていた圭一の背を這い、シャツ越しから体温が伝播した。 「ストップ、ストップ、詩音!」 焦りがそのまま音声となって圭一の口から発せられる。だが詩音は応えずにそのまま抱擁した。 胸の前で組まれた詩音のか細い手を視認し、一層圭一の顔が紅潮した。 「まずいって……、ちょっと……」 詩音に直接言ったわけではない、独白のような圭一の声。 その声を合図にしたかは定かではないが、詩音の額が圭一の肩甲骨の辺りに触れた。 詩音は自分もソファの上に乗り、圭一の後ろに密着するように横になった。 確かに自覚できる上昇する体温。圭一はどうしようか困り果てた。果ててはいけないのだが、この先の行動の選択肢が現れない。 詩音の息づかいが聞こえることであったり、密着する体であったり、香る女子特有のにおいであったり、圭一にとってはひとつひとつが酷く官能的だった。 「圭ちゃん、人を好きになるって難しいんですかね」 詩音から出たのは、また恋文のような甘い言葉。 「もうそれはナシだよ」 諭すような圭一の声。それでも詩音は半ば無視を含んで、恋文を書き連ねた。 好きになったら、何が何だか分からなくなって難しいって言いますよね まぁ……、俺はあまり経験ないけど。 凄いんですよ、小説とか見ると一人の子好くのに、何百ページも描写かかっているんですよ? へぇ、見るんだな、詩音も。そーいうの。 それは偏見ですか? ふふ。お姉もですけど、結構好きですよ。そー、い、う、の、は。 魅音もか。あいつは絵が入ってないとてんで駄目って感じだと思ったけど。 偏見の塊ですね、圭ちゃんは。もうちょっと女の子を意識したらどうですか? このジョーキョーは嫌が応にも……って場面じゃないか? 嬉しいですね。やっと私の偏見が取れましたか? 笑えないよ、それ……。 笑わないでください、真剣な話ですから。 さっきも言いましたけど私は圭ちゃんが好きです。 事実は小説よりー、って言いますけどあれ本当ですよ。色々悩まさせてもらいました。 ……。 結果論ですけど、結局それは私の勝手ですよね。だって恋愛はイエスとノーしかないわけじゃないでしょう? 数学は長い証明の先に仮定が結果になりますけど、それを私と圭ちゃんに当て嵌めるのは誤答に決まってますから。 仮定が結果と違うからって証明に修正を施そうとする問題じゃない。 詩音……、お前なにをい そもそもこれは問題ですらない。 ……。 大好きです、圭ちゃん。 恥ずかしいと思いません。 こうやってくっつく時間をもっと欲しく思っています。 圭ちゃんの温かさを嬉しく思ってます。 あなたが……、欲しいです。 Miwotsukushi3へ続く
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「…はぁっ…んん…」 くちゅ、と卑猥な水音が布団の中に響く。 夜の静かな雛見沢の竜宮家。 小さな一人部屋で、レナは秘所に指を入れ自らを慰めていた。 「…やぁ…あぁ……っ!」 脊椎に直接訴えかけるようなその感覚に、早くもレナは軽く達してしまった。 「……はぁ……はぁ……はぁ……」 今レナの靄のかかった頭の中には、はっきりと圭一がいた。 「…………圭一くん……………」 ――――圭一くんはこんなレナに気づいているのかな。 ――――いや、むしろレナを妄想の種に色々してくれてるのかもしれない。 くすりとレナに微笑みができる。 想い人の事を考える時間は甘く美しい。 感覚か気分かの違いはあれ、 その辺りはどことなくこの行為に似ているのかもしれない。 「……はぁ…っん……ぁ…ぅ…っん……」 また布団の中で行為に浸る。 圭一のことを考えると身体の芯のほうが疼いてたまらないといった様子で、 もはや今のレナは欲に呑まれたただの『女』でしかなかった。 「…ぁ…あぁああっ……はぁっ…あん…や……だ…めっ…」 だんだんと水音もいやらしくなり、顔も蒸気している。 そろそろラストスパートに入ったようで、腰もひとりでに動く。 「…はぅ……うぅんっ………ゃ……もうだ……めっ……ぁ……ぁあっ… …圭一く…んっ……けぃ…いちく……あぁああああっ!」 トロンとした目で荒い息を吐きながら余韻に浸る。 しかし先ほどよりもさらに靄のかかった頭では、少し別の方向に意識が向いていた。 ――――いつからこんなことになったんだろう 最初は本当に手が滑っただけだった。 電気あんまで足の疲れをとっていると、秘所に当たっただけ。 「…っ?!……ひゃぁ……何…これ……?」 思春期の身体が快感を拒むはずもなく、一度火のついた欲は止まらなくなっていた。 「…ひ…ぁああ……っぁ……はぁ…ん…ん…ぁ… …ぁあ…っあ…ひぁ…あ…あぁぁ……ひゃあぁああああっ!」 夢中で快楽を貪り続ける。 はじめて味わう未知の感覚に、 レナは訳もわからず声を上げ、すぐ絶頂を迎えてしまった。 そこから快楽の虜になるにはもう時間の問題だった。 いつものゴミ置き場でレディースコミックや成人誌などをかき集め、 そこに書いてある色々なことを見よう見まねで繰り返し、 いつしか毎日行為を繰り返さないと自分を保てなくなっていた。 ちょうどその頃はリナが毎日家に来ていた時期だったので、 父親との行為で漏れ出る声を聞き、興奮を高めることも少なくはなかった。 ――――そして今に至る、か。 だいぶ思考が冷静になったところで記憶の振り返りは終わった。 今でもはじめて味わった感覚は忘れられない。 …思い出すとまた身体が疼く。 「……はぁ…ぁ……ぁん……んん………ぁあっ……はん……ひぅ……ん…」 気付いた時には手が動いていた。 こんなことで満たされる罪悪感なんて捨てていた。 何もかもがもう遅い。 「…ん……ん……はぁっ……ぁ……はああ……やぁああああっ…………」 ――――さぁ、明日も笑おう。レナは幸せな子なんだから。
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……暗闇の中で唐突に意識が覚醒した。 とっさに後頭部を触り、異変がないことを確認する。 血まみれでもないし、割れていることもない。 ……夢を見ていただけなのだから何もなくて当然だ。 今までに何度も見た、とても恐ろしい夢。 この夢を見ると、決まって震えが止まらなくなり、酷いときには朝まで寝ずに過ごしたこともあった。 ……呼吸の乱れを整えつつ、手探りで隣で眠っている人物……圭ちゃんの手を探り当てる。 その手を強く握り、祈るように圭ちゃんの腕を抱きしめる。 ……大丈夫だよね……? 私は圭ちゃんやみんなに、あんな酷いことはしないよね……? しばらくそうしていると、呼吸の乱れや動悸が収まってきた。 (……うん、もう大丈夫。もう怖くない) ……やっぱり圭ちゃんがそばに居ると落ち着く。 好きだからとか、そういうことじゃなくて……護られているような安心感がある。 私が辛かったり寂しかったりすると優しくしてくれるし、……何か間違ったことをしようとすれば、身体を張ってでも止めてくれる気がする。 いや、気がする、じゃなくて……実際にそうだった。 私が転校してからしばらくして、沙都子と大喧嘩した時のことだ。 ……私の投げた椅子から沙都子をかばってくれたんだ。 圭ちゃんが沙都子をかばってくれなかったら、きっと私は酷く後悔したと思う。 ……きっかけは些細なことだった。 圭ちゃんに悟史くんの事を……失踪した沙都子の兄だって教えたら、なんだか急に沙都子に優しく接するようになって……。 圭ちゃんは優しい人だから、悟史くんの代わりに、沙都子のお兄さんのように接してあげていただけなのに。 それなのに、私は沙都子に圭ちゃんを取られたような気がして、……沙都子が鬱陶しく思えてきて……。 …………そんな私の馬鹿な妬みのせいで、圭ちゃんは額に小さくはない怪我を負ってしまった。 普段は前髪に隠れているが、圭ちゃんの額には、その時の傷痕が残っている……。 静まりかえった教室で、額を押さえてうずくまる圭ちゃんを目の当たりにしたら、なんて馬鹿なことをしたんだって、急に怖くなって。 その場に座り込んで、泣きながらごめんなさいごめんなさいって、ずっと謝り続けてた……。 そして思い出せたんだ。 悟史くんに……沙都子を頼まれたことを。 ……その点に関しては例の悪夢に感謝するべきかもしれない。 夢の中の私も、沙都子の面倒をみなかったことを後悔していた。 ……そもそも、あの夢はいったいなんなのだろう……? 同じ内容の夢を何度も見るのは普通じゃないと思うし、……支離滅裂ではあるが、夢の中の私に全く共感できないわけではない。 もし同じ状況に立たされたのなら、私はどういう行動を取るのだろうか……? やっぱり私も、夢の中の私と同じように感情に身を任せ、この手でみんなを…………? 「……馬鹿馬鹿しい」 ……そんなことをしてなんになるんだ。 夢の中の私だって、自分の愚かな行動を悔いていたじゃないか。 それを知っているから、私は絶対にそんなことはしない。 …………。 ……もうやめよう。 せっかく気持ちを切り替えたつもりだったのに、またあの夢のことを考えるなんて……。 ……外の景色でも眺めて気分転換しようかな。 布団から出て、外を眺めるてみると…… 「あ……そっか。今日は……」 天には闇夜を照らすお月様。 しかも一月に一度しか拝めない、まん丸なお月様だ。 さっきまでの鬱屈とした気分が吹き飛ぶくらいの、とても綺麗な月。 うーん、こんなに立派なお月様を見ていると……。 (圭ちゃんに初めて会った日を思い出すな……) あの日は満月ではなかったけれど……今日と同じくらいに、とても綺麗な月夜だった。 よく覚えている。 一晩中、銀色のお月様を眺めていたから、よく覚えている……。 圭ちゃんの言葉が頭から離れなくて……胸の高鳴りが収まらなくて……ずっと月を見ていた。 「まさかねぇ……圭ちゃんが私を好きになるだなんて。そんなこと考えてもいなかったからなぁ……」 あの日、圭ちゃんと肌を重ねて。 思い出だけをもらって、圭ちゃんのことは忘れようと思った。 どうせ誰かを好きになったって、恋が叶うことはないんだから……。 だから、悟史くんのことも圭ちゃんのことも忘れて……もう二度と恋をしないと決めたのに。 それを圭ちゃんが、たった一言であっさりと吹き飛ばしてしまった。 ……あの頃の私は、自分の気持ちしか考えていなかった。 誰かが私を好きになるなんて考えていなかったし、それが誰かを好きになるのと同じくらいに幸せなことだなんて、全然知らなかった。 以前の私は、愛情は与えるだけの物だと思っていた。 ……でも、本当はそうじゃない。 愛情はお互いに与え合って育んでいく物だ。 私が与えた愛情を圭ちゃんから返して貰うと、私が与えた時よりも一回り大きくなって返ってくる。 それを何度も繰り返していたら……圭ちゃんへの気持ちは、抱えきれないほど大きくなっていた。 それはいつの間にか、悟史くんに対しての気持ちよりも……。 「……悟史くん、早く帰って来ないかなぁ……」 悟史くんには話したいことがたくさんある。 ちゃんとした自己紹介だってしたいし、一年間も沙都子を放っておいたことも謝りたい。 それに……確かめたい。 私の圭ちゃんへの想いが、偽物なんかじゃないって……確かめたい…………。 「……………………」 目を覚ましてからどれほど経つのだろうか。 十分か、二十分か。 それとも、まだ五分程度なのか。 いずれにせよ、このまま仰向けで天井を見つめていてもしょうがない。 一緒に眠っていたはずの人物の気配はまったく感じられない。 既に階下へ行ってしまったのだろう。 「……なんで起こしてくれないんだよ」 泊まりに来るときはいつも先に目を覚まし、俺を起こしてくれていたのに。 花柄の可愛らしいパジャマ姿で、圭ちゃん圭ちゃん起きてください、って……。 「ハァ……」 あのパジャマ、よく似合ってるから好きなのに。 あれを着た詩音に起こしてもらうのが、詩音が泊まりに来たときの、俺の密かな楽しみだったのに。 ……ま、愚痴っててもしょうがない。 ガバ、っと勢いよく跳ね起き、おぼつかない足取りで自室を後にする。 一階へ下りて詩音を探しに……って、その前に顔を洗わないとな。 洗面所へ向かって歩いていたら……いきなり背後から抱きつかれた。 「だぁ~れだ☆」 「…………は?」 そいつは俺の背中に、大きくて柔らかい何かを押しつけている……。 誰って……こんな事をするヤツはひとりしか居ないだろ。 ……おいおい、まさかこんな事をするからって、俺を起こしてくれなかったのかよ……? なんかちょっと悲しくなるが、問われているのだから答えねばなるまい。 「……詩音だろ? 分かったから放してくれよ……」 「ぶーーーッ!! はっずれーーー!!」 「ハズレでもなんでもいいからさ。早く放し……。…………ハズレ?」 ハズレって……詩音じゃない? 詩音じゃないとしたら、……誰なんだよ?! 慌てて拘束を振りほどき、相手の顔を…………。 「……魅音……?」 「おっはよ! ……なんか寝ぼけてるみたいだけど、大丈夫?」 「…………ちょっと待ってくれ。ってことは、俺の背中に胸を押しつけていたのは……」 「私だけど? いや、レナがね。圭一くんなんて、魅ぃちゃんが背中におっぱいを押しつければイチコロだよぅ、なんて言うからさぁ」 「レ、レ、レナぁああぁあああッッ!!!」 「はぅっ!?」 声のした方に視線を向けると、戸の隙間からレナがこちらを覗いていた。 またか……レナのヤツめぇ…… いつもいつも、魅音を使って俺で遊びやがってぇぇえええ……ッ!! こちらの様子に気づいたレナは、一目散に逃げ出した。 「レナ、待てこらっ!! 毎度毎度、魅音にいらんことを吹き込みやがって!! 今日という今日は許さんッ!!」 「はぅ~! 圭一くんが怖いよ~ぅ!! 怒らないでぇ~~!! 軽いジョークなのに~~!!」 泣きわめくレナを全速で追い回す。 家中を逃げ回った挙げ句、レナは台所へと逃げ込んだ。 レナを追いかけて、台所へ入ると……。 「ちょ、ちょっと、レナさん!? どうしたんですか……?」 「……は、はぅぅ……」 詩音がエプロン姿でフライパンを持っている。 ……どうやら朝食の準備をしていたようだ。 レナはというと、詩音の後ろに隠れてプルプルと震えている。 「……圭ちゃん。これはどういうことですか?」 「どうって……。いや、レナが……」 「この怯え方は普通じゃないです!! まさか圭ちゃん……レナさんに変なコトをしようとしたんじゃないでしょうね……?」 「はぁ!? ち、違う!! 俺はそんなことは……」 「はぅぅ、詩ぃちゃん、違うの~。圭一くんがレナを追いかけてきて、それとおっぱい……」 「ちょ、レナ?! 誤解を与えるような言い方をするな!!」 詩音の手からフライパンがこぼれ落ち、からぁん、と乾いた音を立てる。 「ま、待て、詩音……。落ち着け……」 詩音の顔から表情が消えていく……。 そして、音もなく、ゆっくりと俺に歩み寄ってきた。 ……あぁ、もう、なんでこうなるんだよ。 せっかくの日曜日だってのに、……今日は最悪の一日になるかもな……。 「……圭一くん、ごめんね。レナが悪かったよ。はぅ~……」 向かいの席に座ったレナは、本当に申し訳なさそうな表情でうな垂れている。 レナは本当に冗談半分だったのだろう。 俺を怒らせてしまったと思って、心から謝罪しようとしているのがよく解る。 それに引き替え、こいつらは……。 「圭ちゃん。もう許してあげなよ? レナだって素直に謝ってるじゃん」 「そうですよ。こんなに落ち込んだレナさんを見て、可哀想だとは思わないんですか?」 「…………お前らが言うな……」 実行犯のくせに全く反省していないな、二人とも。 「機嫌直してぇ……レナの卵焼きあげるからぁ~……」 レナはそう言い、うるうるした瞳で小皿を差し出している……。 なんか、揃いも揃って俺が怒っていると勘違いしているらしい。 「……別に怒ってるわけじゃないよ。誰かさんのせいで頭が痛いから黙ってるだけだ」 「あ、あぁ……そういうことですか……。あはは……」 詩音が引きつった表情で笑う。 ったく、少しは手加減しろってんだ。 床がコンクリートだったら死んでいたぞ。 「いやぁ、それにしても見事なパイルドライバーだったねぇ。きれ~~いに突き刺さっていたよ」 「……だろうな。半年くらい前に亡くなった親戚のおばあさんが、川の向こうで手招きしていたし。優しい人だったから、つい渡ろうとしてしまったよ」 「け、圭一くん……。それ、渡らなくて良かったよ。はぅぅ……」 「あは、はは……。そんな大袈裟なぁ……。………………。……あの、圭ちゃん?」 「なんだよ?」 「その…………ごめんなさい……」 詩音は俺に深々と頭を下げる……。 「だからもう怒ってないってば。誤解だって解ってもらえたし、それに……」 「……それに……?」 「……いや、なんでもない」 ……役得もあったしな。 …………今日は白か…………。 「……ちょっとさ、ト……顔洗ってくるよ。なんか頭がボンヤリするし」 「ホント? それなら冷たい水でスッキリした方がいいかもね」 「……あぁ、スッキリしてくる……」 「そういうわけだから。大金が掛かってるし、気合い入れてよね~?」 四人で仲良く朝食を取り終えると、魅音が俺の家に訪問した理由を説明してくれた。 なんでも例のゲーム大会の決勝戦が、実は今日だった、というのだ。 「まぁ、事情は分かったけどさ。それならそれで、もっと早く教えてくれれば良かったのに」 「いやぁ、ごめんごめん! うっかりしててさぁ。昨日の晩に思い出して、他のみんなには電話したんだよ。でも、圭ちゃんの家だけ繋がらなくて。何度も電話したんだけどねぇ~」 「……そういうことか」 ……なるほど、俺の家に繋がらないのは当然だ。 何故なら昨晩、俺と詩音は……。 「あ、もしかして……お楽しみ中だった……?」 「み、魅ぃちゃん!? そんなこと聞いちゃダメだよぅ!!」 「まぁな。なかなかうまかったよ」 「け、けけ、圭一くん?! うまかったって……そ、そんな言い方は詩ぃちゃんに失礼なんだよ!!?」 「へっ? そんなこと無いですよ。私が紹介したわけですし、おいしいって言われれば嬉しいです」 「し、詩ぃちゃんの紹介?! それじゃあ……詩ぃちゃん公認の浮気?! は、はぅぅ……」 「……おい、レナ。なんか勘違いしてないか? 俺と詩音はカレーを食べに行っただけだぞ」 「えっ!?」 「前に私と食べに行ったお店でしょ? 今度は圭ちゃんと一緒に来よう、って言ってたよね」 「そ、そうなんだ……。レナ、勘違いしちゃったよ……」 レナは、えへへー、と照れくさそうに頭を掻く。 とんでもない勘違いだぞ、ホントに。 まぁ何にせよ、だ。 臨時収入の可能性があるのは、素直に嬉しい。 それなりに高価な人形を二つも買ったせいで、圭一王国の財政状況は火の車なのだ。 「ところでさ、圭ちゃん。私だけ優勝しても自分のお金が返ってくるだけ、ってのは不公平だと思わない?」 「ん? いや、まぁ。それもそうだな」 「だからさ。私が優勝したら……」 「魅音が優勝したら……?」 「圭ちゃんには…………私とデートしてもらうッ!!」 「………………は……? ……な、ななな!??」 お、俺が魅音とデートぉ!? ちょ、ちょっと待て!! 「そんなのダメに決まってるだろ!? そうだろ詩音?!」 「別にいいんじゃないですか? 圭ちゃんが優勝すればいいわけですし」 「そういう問題じゃないだろっ!?」 「そうそう。圭ちゃんが優勝すれば、なぁーんにも問題ないよ。……それとも何? もしかして自信が無いわけぇ?」 「はぁ!? そんなわけねぇだろ!! 俺が本気になれば、ぶっちぎりで優勝だ!! お前らには影すら踏ませねぇ!!」 「よし、それじゃ決まりだね! いやぁ、想像しただけでわくわくするよ。おじさんにドギマギする圭ちゃんをからかうのは、さぞかし楽しいだろうねぇ」 「ほざきやがれ……! 優勝するのは俺だッ!!」 魅音とにらみ合い、バチバチと火花を散らす。 ……なんか勢いでとんでもない約束をしてしまったが、本当にいいのか……? まぁいずれにせよ、これ以上は小遣いの前借りも出来ないだろうし、何が何でも優勝するしかない。 さすがに交際費を女の子にだけ払わせるのは、男として問題があるしな。 …………俺もバイトしようかなぁ……。 「ところでお姉。沙都子と梨花ちゃまは診療所に寄ってから来るんですよね?」 「ん? そう聞いてるけど」 「それなら、私も診療所に行きます。お姉たちは先に行っててください」 「……どうした? 具合でも悪いのか?」 「いえ、そういうんじゃないです。最近、監督の沙都子を見る目がいやらしい気がするので、監視しておきたいんです」 「それはいつもの事だと思うけどな……」 「診療所に行くなら、そろそろ向かった方がいいよ。沙都子たちも家を出る頃だと思うし」 「あれ? 詩ぃちゃん、もう出ちゃうの? お茶を煎れようと思ってたんだけど……」 おぼんを持ったレナが、残念そうな顔をしている。 さっきフラっとどこかへ行ったと思ったら、台所へ行っていたのか。 「あ、いえ。せっかくですから、お茶をいただいてから出発します」 「ホント? 良かったぁ~」 レナは笑顔を取り戻し、湯飲みを配り、順々にお茶を注ぎ始めた。 ……しかし、当然のようにお茶を用意するレナってのもあれだな。 勝手知ったる人の家、って感じだ。 お袋と仲良いもんなぁ……。 「ん……? あれ? ちょっとちょっと! みんな、これ見てこれっ!!」 なんか魅音が湯飲みを指さしている。 みんなで覗いてみると……。 「お……茶柱か。珍しいな」 「へっへー! 幸先いいね!! こりゃあ、優勝はおじさんで決まりかな!!」 「ふん、そんなので優勝が決まってたまるかよ……って、ちょっと待て。俺のも茶柱が立ってるぞ」 「ふぇ!? ホント?」 「へぇ、二人も一緒にだなんて珍しい……あれ? 私のも立ってますよ」 「レナのも立ってるよ」 ……静寂が場を支配する。 おいおい、いくらなんでも全員が茶柱を立てるなんて出来すぎだろ……? 「これはただ事じゃないね……。なにかとんでもないお宝でも見つかるんじゃない? レナ御用達のゴミ山辺りから」 「なんだなんだ? 徳川埋蔵金でも見つかるのか?」 「徳川埋蔵金じゃなくても、大判小判がざっくざく、くらいはあるかもしれませんね~」 「はぅ……。かぁいい招き猫なら、この間見つけたけど……」 ……埋蔵金は冗談にしても、みんなに喜ばしい事が起こるのは間違いなさそうだな。 しかし、ここに居る全員にとって嬉しいことって、一体なんなんだ……? 「あら? 珍しいですわね。二人揃ってだなんて」 少女は、自らがお茶を注いだふたつの湯飲みを見比べながら、そう言った。 それに対し、彼女の同居人は沈黙を保っている。 「吉兆ですわ! 今日のゲーム大会は、私か梨花の優勝で決まりですわね!!」 「…………」 「圭一さんや魅音さん、レナさんも、みんなみーんな私のトラップで血祭りに上げて差し上げますわーッ!! ……梨花ぁ? どうしたんでございますの?」 長髪の少女は答えない。 ただただ、笑顔だけを浮かべている……。 「昨日から変ですわよ? ずーっとニヤニヤしてて。変なモノでも食べたのでございますの?」 「沙都子。この茶柱は、神様からのご褒美なのです」 「……ご褒美?」 「そうなのです。沙都子が強くなったから……ひとりで頑張ってきたから、神様がご褒美をくれたのです」 「よく分かりませんけど、ご褒美が茶柱だけだなんて、神様もしみったれてますわね」 「そんな事はないのですよ……」 長髪の少女は笑顔を絶やさない……。 彼女だけが知っている。 近い将来、親友が喜びのあまり泣き崩れることを。 近い将来、親友がこの家を出て行ってしまうことを…… 彼女だけが知っている……。 To Be Continued... Chapter-1 Hold me tight Chapter-2 アンダースタンド1
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前編 無題 圭一×魅音 前編 最近、圭一くんの様子がおかしい。 いつも一緒に学校に行っていたのに、ある日を境に突然私を置いて学校へ行くようになった。 授業中も部活も生き生きとしていたのに、ある日を境に突然ぼーっとすることが多くなった。 そして何より、帰りが遅い。一緒に帰ろう、といってもいつも断られる。 知恵先生の花壇に水をあげたり、セブンスマートで雑誌やえっちな本を立ち読みしたりなど、理由はいろいろあったが、それらの共通点はすべて『普段の圭一くんなら絶対にやらなかったこと』というもの。 私が一緒に帰ろうと待っていても、うまくまかれてしまう。たまに魅ぃちゃんと、私抜きで遊びに行く。普段の圭一くんなら、私も誘ってくれるのに。 そう。ある日を境に、圭一くんはおかしくなってしまったのだ。 どうしよう。私が悪いのかな、かな。でも心当たりは何もない。それどころか、圭一くんに嫌われるようなことは何もしていないはずなのに。 沙都子ちゃんも、魅ぃちゃんも、梨花ちゃんも、知恵先生も、監督も鷹野さんも富竹さんも、誰も介入している様子はない。 でも落ち着きなさいレナ。よく周りを見なさい。七度どころか既に十三度は人を疑っている。既に人を訪ねていい段階のはず。 私に心当たりがないのなら、それ以外の身近な人間が圭一くんの活力を奪っている、そう考えるのが筋というものだ。 まずは圭一くんに直接聞いてみよう。 放課後になった。 圭一くんはうつろな目で、セブンスマートで買ったと思われるクリームパンを食べている。…お昼ご飯とっくに食べたのに。 「圭一くん、聞いていい?」 「…ん。いいぜ。」 発言に対する反応も遅い。絶対におかしい。こういうときは単刀直入に行くと、すぐにぼろを出す。 「レナのこと嫌いなのかな、かな。」 「い、いや、そんなことはないぜ…」 男が目をそらすときは、たいてい疚しいことがあるということ。どうしてわかりやすいんだろう。でも、こういう男には攻めの一手に限る。 「嘘。圭一くん、何かレナに隠しているでしょ。」 「何も隠してないし、レナが嫌いなんてことはない。」 「嘘だ。」 「嘘じゃない、レナ、俺は…」 圭一くんがしどろもどろになり始める。もう一押し。 「嘘d」 「圭ちゃーん。」 そこに空気を読まずに、あるクラスメートが入ってきた。圭一くんの表情がこわばるのを、私は見逃さなかった。 「魅ぃちゃん?」 「魅音さ…」 「あっれ~?何話してるの?」 圭一くんの言葉を遮るように、魅ぃちゃんは私に話しかける。 「ううん、別になんでもないよ。」 悟られたらまずい話ではないが、ややこしくしないために、私は笑顔であしらった。 それは本当に異様な光景だった。 圭一くんも、魅ぃちゃんも、私も、縁日の夜店のお面のように不自然に作られた微笑みを浮かべている。 圭一くんのは本当に下手な笑い方だったけど。 人間なんて、腹の中で何考えているかわかったもんじゃない。 「じゃ、圭ちゃん。行こっか。」 「あ、ああ。じゃあなレナ。」 魅ぃちゃんに引っ張られて、圭一くんは行ってしまった。 …明らかに、おかしい。魅ぃちゃんにおびえているかのような表情の変化。それよりも『魅音さ…』というあの不自然な『さ』。 あの『さ』が敬称だとすれば、魅音さん、もしくは魅音さまと言おうとしていたことになる。どちらも目上の人につけるものだ。今まで年齢なんて関係なしに呼び捨てで呼んでいた圭一くんが使うにはあまりにも不自然。 昨日、一昨日と圭一くんは部活で3位と普通の成績だった。最下位は沙都子ちゃんと梨花ちゃん。圭一くんが罰ゲームに干渉することはほぼありえない。ゆえに罰ゲームという線はなくなる。 ということは、魅ぃちゃんがプライベートで何らかの関係を持っている。 それが圭一くんの活力を奪っていると見て、間違いない。 後ろを、気づかれないようにつけていく。魅ぃちゃんも圭一くんも、たまにぼそぼそと何か話す程度。どこへ行くのだろう、と私は思った。 どこへ行くかは、すぐに明らかになった。この道の方向で大きな建物なんて、園崎本家、つまり魅ぃちゃんの家しかない。 「圭ちゃんにはお仕置きしないとねー」という声が耳に届いた。 園崎本家のお仕置きと来れば…間違いなく、拷問。縛られて血まみれになっている圭一くんを想像する。…それはいやだ。 ではなぜ、圭一くんは魅ぃちゃんにお仕置きされなければならないのか。いや、正確にはなぜ圭一くんは無抵抗なのか。おそらく、弱みを握られているからだろう。強請りの典型的なやり方だ。なんと浅はかなことか。 だがこのままではいけない。どうにかして、園崎の魔の手に絡めとられた圭一くんを救い出すんだ。そのあと、私と圭一くんはどこかへ逃げればいい。 私の不安に比例するかのように、影が伸びていく。 家に忍び込むのは造作のないことだった。広い家だ、抜け道のようなもののひとつやふたつはあるものだ。 そこに警備をつけていない園崎家は、なんと愚かしいことか。よほど他の組に攻め込まれない余裕があるのだろう。 いや、僻地の組なんてそんなものか。不審者が居ればすぐにわかるから、それを袋叩きにすればよい。体内に侵入した雑菌は、白血球により始末される。雛見沢に忍び込んだ異物は、園崎を中心に、村人によって排斥されるのだ。 しかしあらためて見ると本当に広い家だ。こんな広い家では、掃除も大変なことだろう。 そして圭一くんたちは、妙な場所にある洞窟に向かったようだ。 前にドラマで見たことがある。大体こういうところには、拷問道具や牢獄があるんだ。 圭一くんが危ない。 私は意を決して、洞窟に向かい… 「ようこそ、レナ。」 気を失った。 頭が、痛い。割れるように痛い。意識が覚醒していく。あれ、どこだここ。 「お目覚めかな?」 私は地下牢の中に居た。やっぱりあの洞窟は地下牢だったんだ。 鉄檻を挟んで、魅ぃちゃんが何かに座っている。…圭一くんはどこへ行った? 「気づかれないとでも思ったの?」 魅ぃちゃんが足を組んでいる。女王のような余裕の表情。 「だってラブラブに見えたもん。そういう人たちって、周りのことあまり気にしないでしょ?」 「そう見えてた?おじさん嬉しいなぁ!」 心にもないことを。どちらも腹の底じゃそう思っている。 暗赤色の憎悪が渦巻く。体中の血が沸き立つ。笑みを貼り付けるのも限界だ。 「ところで圭一くんは?」 「圭ちゃん?ほら。ここにいるじゃない。」 魅ぃちゃんはにやにやと笑っている。どこにいると?からかうのもいい加減にしろ。少なくとも私の視界には入っていないはず… 「よく見てみなって。」 魅ぃちゃんが座っているもの。それは。 「これが本当の人間椅子、なーんてね。」 素っ裸で四つんばいになった、前原圭一だった。 「圭一くん!?」 薄暗くてよく見えないが、息は荒く表情は苦しそうだった。魅ぃちゃんはその上にどっしりと座っている。 許せない。圭一くんを、よくも。このふざけた女は、哀れな圭一くんを…! 「圭ちゃんね、レナが起きるまで…大体1時間くらいかな?ずっとこうしてるんだよ。」 「圭一くんを放せ。」 「それはできないねぇ?だって、これは圭ちゃんも了承の上でやっていることだもん。」 魅ぃちゃんは立ち上がった。圭一くんはその場に倒れこむ。 「圭一くん!」 「…レナ…」 よかった、意識ははっきりしているみたい。でも。 「レナと話していいなんて誰が言った!?」 魅ぃちゃんが圭一くんの頭を踏みつけた。 「あぅ!」 「あうだのはにゅだの言ってんじゃないよ、この下僕!言ったよね!レナと話すなって。ど う し て 守 れ な い の か な。」 「ご、ごめんなさい…」 容赦なく、ぐりぐりと足で踏みつける。圭一くんは涙を流しながら謝る。 「ごめんですめば大石は綿流しに来ないんだよ!」 「あがっ…」 しかし魅ぃちゃんは謝罪を無視して、太極拳の技のように、思いっきり容赦なく踏みつけた。 圭一くんの顔が、土と涙が混じりあったものでどろどろになる。あまりにも凄惨で、私は目を背けたかった。 でも、なんだろう。圭一くんは、ただ痛い、悔しいだけじゃないような、そんな表情を浮かべている。 例えるなら針灸の客のような表情。痛いんだけど、気持ちよさそうな… 「まぁいいや。…レナ。圭ちゃんがかわいそうに見える?」 「これ以上圭一くんをいじめないで。」 「言ったでしょ?それはできないって。」 魅ぃちゃんは厭な微笑を浮かべる。 「レナは知らないと思うけどね。圭ちゃんは私に冤罪を吹っかけて、罰ゲームと言って私に恥辱極まりない行為を要求したんだよ。」 魅ぃちゃんが圭一くんの顔を踏み躙りながら言う。 「ふぅん?圭一くんにメイド服を着せるのは『恥辱極まりない行為』じゃないの?」 そうだよ。魅ぃちゃんだけ罰ゲームに逆上するなんて、なんかおかしい気がする。 だが、私の考えはすぐに変わることになった。 魅ぃちゃんは目を見開いて私を見つめる。無知な者に対する怒りを込めた、狂気の雑じったその瞳に、私は若干の恐怖を覚えた。目の前に居る人間が、私の知っている園崎魅音ではないような気さえしてくる。 「四つんばいになって村中歩かされて、お尻に変な尻尾まで入れさせられて、挙句の果てに犬のまねしておしっこしろなんて言われて!これがメイド服とつりあうと思うの!?」 え? 「泣きながら家に帰ったよ。婆っちゃにも母さんにも、何があったか聞かれた。話さなかったけどね。ホント、夜は悔しさと恥ずかしさで眠れなかったんだよ。…どれだけ私が傷ついたか、レナにはわかるの!?」 確かに傷つく。でも嘘だよ。圭一くんはもっとモラルのある人だよ…一縷の望みを、私は圭一くんにかける。 「…圭一くん、ホント?」 圭一くんは、寝転がったまま魅ぃちゃんを見上げる。その視線を受けて、魅ぃちゃんは疲れ果てたような表情で、つぶやくように言った。 「圭ちゃん、あとは話して。私疲れちゃったよ。」 「は、はいただいま…」 圭一くんは起き上がって四つんばいになる。魅ぃちゃんはその上にどっしりと座った。 「…私、前原圭一は…魅音に」 「魅音?」 その言葉を聞いた瞬間、魅ぃちゃんの表情が豹変した。 仕事帰りのお父さんのような疲れ果てた表情から、閻魔も裸足で逃げ出すような表情に。子供が見れば三日三晩ずっと泣き続けるような、まさに『鬼の形相』がそこにあった。 「いぎっ!」 「なんて呼べって言ったかなぁ?ここは学校じゃないんだよ?ホント物覚えが悪いね、圭ちゃんは。」 「ごめんなさいごめんなさい!」 「だぁーかぁーらぁー!謝ってもらってすべてが済むなら警察なんていらないんだよ!」 「ごめんなさい魅音様なんでもしますから許して!」 「ね?レナ、こいつ情けないでしょ?」 魅ぃちゃんはケタケタと笑いながら、つねっていた手を離した。つねられていた部分は真赤に腫れ上がっていた。本当に、容赦がない。 「ほら圭ちゃん、とっとと終わらせて。」 「はい…この下僕めは、失礼ながら魅音様の下着で自慰行為をぐぁっ!」 「もっとわかりやすく!」 思いっきりお尻を叩く。ピシッ、といういい音がして、圭一くんは苦悶の表情を浮かべる。 痛そうだ。すぐにでも救いたい。でも、それを見ていることしかできない。今の私は檻の中の囚人なのだ。 無力だ。本当に無力だ。 「魅音様のパンティーの匂いで欲情して、汚いくさいチンポに擦り付けて、汚らわしい精液をぶっ掛けていたグズ野郎です!今は魅音様のお情けでこうして下僕として雛見沢に住むことができています!私は感謝の気持ちでいっぱいです!」 圭一くんは、泣き叫びながら大声で叫んだ。 「ふん、やればできるじゃない、圭ちゃん。」 「魅音様ぁ…」 背中に乗った魅ぃちゃんになでられて、圭一くんはちょっと嬉しそうな表情を浮かべている。さっきまで泣き叫んでいたのに。 無様だ。本当に無様だ。 圭一くんは確かに変態さんっぽいところはあったけど…まさかこんな、変質者のようなことを… 「さ、ご褒美あげちゃおうかな。」 魅ぃちゃんは立ち上がり、いつもの赤いロングスカートを捲り上げた。下着が丸見えになり、圭一くんがもの欲しそうな表情になる。 薄桃色の、レースなどはまったくあしらっていない、シンプルな下着だ。魅ぃちゃんって意外と着飾らないのかな。私は結構入念に選んでいるけど…って。そんなこと考えている場合じゃない。 「ねぇ、圭ちゃん。」 「は、はい!」 「圭ちゃんは私の何?」 「奴隷!下僕!所有物です!」 「だよねー。ごめんね、当然のこと聞いちゃって。」 場違いなほど明るい声が、鋭いトゲとなって突き刺さる。 圭一くんは少し傷ついたような、それでいて気持ちよさそうな、例の『針灸の客』のような表情を浮かべている。 「ほら」 魅ぃちゃんは下着を脱いで、それを放り投げた。圭一くんの目が見開かれる。そんな圭一くんを、心底軽蔑しきったような目で、魅ぃちゃんは言い放った。 「貸してあげるよ、今日一晩。」 「ああ、ありがとうございます!」 圭一くんは頭を何度も地面につけて礼をした。なんだろう。すごく情けなく見える。たかが布ごときにここまで必死になるなんて。 「さ、拾ってきて。」 「はい!」 圭一くんは立ち上がった。次の瞬間、魅ぃちゃんの足払いが、映画の一こまのように美しく圭一くんを転倒させた。 ど素人の圭一くんが受身など取れるわけがなく、その場に思いっきり倒れこむ。魅ぃちゃんは追撃とばかりに、倒れこんだ圭一くんの髪を思いっきり引っつかんで、無理やり顔を向き合わした。 「だ れ が立っていいって言った!圭ちゃんは犬なんだよ!わかってるの!?ほんっと物覚え悪いなぁ!」 「は、はい申し訳あぐっ」 「まったく、ホント駄目だね圭ちゃんは。ちょっとばかりお勉強できても、物覚えは悪いんだね。」 魅ぃちゃんが足を上げる。圭一くんは脅えたような表情を見せる。さすがにかわいそうになってきた。 「魅ぃちゃん…やめてあげてよ。」 「そだね、どうせ殴っても蹴っ飛ばしてもわかるわけがないんだから。ほら圭ちゃん、取ってきな。」 「は、はい!」 圭一くんは四つん這いになって、投げ捨てられた魅ぃちゃんの下着のところへ走っていった。圭一くんってこんなに気味の悪い行動を喜んでする人だったかな。 投げ捨てられていた下着を、口でくわえて、やはり四つん這いの格好で戻ってくる。 「はふはふ!」 「よくできたね~、やればできるじゃない。」 魅ぃちゃんが圭一くんの頭をなでる。 いやだ。気持ち悪い。生理的に受け付けない。 好きだった男の子が、今、私の目の前で、全裸になって女の子の下着をくわえてうれしそうにしている姿なんて、誰が見ても気持ち悪いとしか思えない。 「ね?レナ。無様でしょ?これが、私たちが惚れていた男の本性なんだよ。」 「…」 何も言えなかった。 あまりにも無様すぎて、擁護しようにもできなかった。 「ね?ほら。レナが気持ち悪いってさ。嫌われちゃったね圭ちゃん。」 魅ぃちゃんが圭一くんの頭をなでる。圭一くんは相変わらず下着をくわえっぱなしだ。涎が下着をどろどろと濡らしているのを見て、私の嫌悪感は加速した。 「ごめんなさい…」 「謝る必要なんてないよ。詩音でも梨花ちゃんでも鷹野さんでも知恵先生でもお母さんでも沙都子でも悟史でも、今の圭ちゃんを見たら無様で気持ち悪い最低のクズだって思うだろうからね。そうだ、この気色悪い圭ちゃんの姿をみんなにも見てもらおうか!」 「ううっ…」 「おちんちんこんなに硬くしてさぁ!圭ちゃんもしかして自分がバカにされているって気づいてないの?」 圭一くんを蹴飛ばして仰向けにする。股間の、そこまで大きくはないが醜悪な形をした肉棒が、天を貫かんとばかりにいきり立っている。 「ねぇ見てよレナ。圭ちゃんってばこんなにひどいこと言われているのにすっごく興奮しているんだよ!」 魅ぃちゃんの高笑いが、地下洞に響いた。 圭一くんは、反論もせずに顔に魅ぃちゃんの履いていた下着を乗せて深呼吸なんてしている。呼吸に合わせて、あのグロテスクな物体がぴくぴくと震えた。 「うわ、圭ちゃん気持ち悪いなぁ…そんなにパンツがいいわけ?」 「はい、前原圭一は魅音様のパンツに欲情する変態です!」 「あっははははは!確かにそうだねぇ、ここに来てから今までずっとおちんちん勃起させっぱなしだもんねぇ!レナ、信じられる?ずーっとカチカチにしてたんだよ?私の椅子になっていたときからずーっと!どうしようもない変態野郎だよねぇ!」 「はい、前原圭一は魅音様に座られている間ずーっと興奮していました!」 「散々ゴミみたいに言われて、蹴飛ばされて、ぶたれてもカチカチのまんま!今日だけじゃないよ、昨日はたしかあそこにあった貞操帯つけさせたんだけどさ、その間もずーっと勃起してんの。おちんちんのことしか考えられないんだよ、圭ちゃんは。」 「はい、ずーっと興奮してチンポ硬くしてました!」 「どうよレナ!これが私たちの惚れていた男の本性!いじめられることで大喜びしている変態だったんだよ!」 魅ぃちゃんが壊れたように笑っている。 圭一くんの表情は下着に隠れてよくわからないけど、なんか…すごくつらそうなんだけど、嬉しそうだった。 相変わらずグロテスクな肉棒をいきり立たせて。本当に。気持ち悪いことこの上ない。 「魅音様…どうかこの前原圭一めをお見捨てにならないでください…」 「見捨てるわけないじゃない。圭ちゃんみたいなのを学校に野放しにしてたら、梨花ちゃんや沙都子が危ないからね。」 それを見たとき、 頭の中で、何かが、はじけた。 「ねぇ魅ぃちゃん、私も入れてくれないかな。」 そうだ。圭一くんはクズのように扱われても、こんなに喜んでいるんだ。かばっちゃいけないよね。興が冷めちゃう。 「え?」 魅ぃちゃんは私をまじまじと見つめた。信じられないかな。確かに急な心境の変化ではあるけど… 「こんな社会の吹き溜まりみたいなの、魅ぃちゃん一人で飼うのは大変でしょ?夜は一人でおうちに帰すんでしょ?ダメだよ、帰り道に詩ぃちゃんや梨花ちゃんに会ったら大変なことになっちゃうよ?」 魅ぃちゃんはにんまりと笑う。部活のときと同じ。意思の疎通ができたしるし。 女王は仰向けになった奴隷に、見下すように言い放つ。 「ほら、圭ちゃん。レナが気持ち悪いの我慢して飼ってくれるってさ。なんていうの?こういうときは。」 「ありがとうございます!魅音様だけでなく、レナ様にも飼っていただける私は果報者です!」 「…ま、いっか。圭ちゃんにしちゃ上出来だよ。ちょっと待っててねー。」 魅ぃちゃんはスカートのポケットから錆び付いた鍵をだして、鉄檻の扉を開けた。 外に出て改めてみると、意外と凄惨な場所だった。同じような牢獄がいくつもある。牢獄のある部屋はホールのようになっていて、声が響くようになっている。この牢獄の入り口と思しき場所には、いやな形をした拷問器具がたくさんおいてある。 おそらくこの声を響かせることで、牢獄の中の者を恐怖におののかせようという意図なのだろう。なんとも悪趣味な話だ。 「ほら圭ちゃん。新しいご主人様に挨拶しな。」 「今日から竜宮レナ様のものになる前原圭一です…」 這い蹲る圭一くんを見下ろす。土下座した背中の曲線、きっちり地面についているおでこ、なお手放さない魅ぃちゃんの下着… なんて無様なんだろう。部活で勝ち誇っていたあの表情が嘘のようだ。 「レナ、靴下脱いで。」 「うん。…あれ?私の靴は?」 「ここは一応祭具『殿』だから。神殿に土足で踏み入ると祟られるよ。」 祭具殿…だが、祭具というにはあまりにも不気味すぎる道具が多い。 圭一くんは、靴下を脱いだ私の右足をすんすんと嗅ぐ。 「あっはははは!足なんて嗅いでどうするの、圭一くん!」 「レナ、これは圭ちゃんなりの服従の表現なんだって。」 「へぇ…」 圭一くんはそのまま、私の足の指の間を入念になめ始めた。 「あはは、くすぐったい!」 「あー、おじさんにはやってくれなかったのにー!ぶーぶー!」 ぬめぬめとしている気持ちの悪いものが、足の裏、甲、指までを嘗め尽くす。 時に入念に、時に激しく。舌先が土踏まずを撫ぜるときに、妙にくすぐったくなる。 圭一くんはおそらく必死になってやっているのだろうが、あまり気持ちのいいものではない。むしろ足の裏をナメクジが這いずり回っているような、不気味な感覚。 「下手っぴだね、圭一くん。蹴飛ばされたいのかな、かな?」 「はい、下手です…」 「圭ちゃん、よっぽどレナのこと気にいったんだね。」 魅ぃちゃんが圭一くんの頭を撫ぜた。 「圭ちゃんね、パンツ大好きだからあげると大喜びするよ。」 「だから魅ぃちゃんのパンツずっと握り締めてるんだね。気持ち悪いね。」 「はい、圭一はパンティーが大好きです…匂い嗅ぎながら自分のチンポこするような気持ち悪い無様な変態奴隷です…」 「ほら。レナ、こんなこと言ってるよ。あとでレナもパンツ渡してあげないとね。」 「もっちろん!こんな格好でパンツ握り締めて女の子の足を舐めてる圭一くんの無様な姿、みんなにも見せてあげたいなぁ…」 もう、人としての尊厳すらないように思える。無様で、自分の欲望のために動く、バカにされて大喜びしている気持ち悪い男だ。 「ところで魅ぃちゃん。」 「何?」 「圭一くん、ここパンパンに張らせて苦しそうだよ?」 汚らしくて、穢らわしくて、厭なにおいをあたりにぷんぷんさせている。さっきも私の声に反応するように、びくびくと震えた。 魅ぃちゃんだけじゃなくて、私にもいじめられて興奮しているのかな。 「あー、たしかにねぇ…こりゃぴくぴく痙攣してて苦しそうだ。」 魅ぃちゃんも乗ってきた。もう少し過激にいってみよう。 「こんな汚いの、切っちゃおうよ。」 「そうだね、これ切っちゃえば圭ちゃんも少しは楽になるでしょ。」 魅ぃちゃんが、指先で茎の部分を突っつく。もちろんそんなつもりなんて毛頭ないが、圭一くんは本気にしたらしい。不安げな表情になってうろたえ始めた。 「こりゃ本当に切らなきゃまずいよ。ハサミ持ってくる?」 「お願いしますっ!それだけは、それだけはどうか!」 「ダメだよ圭一くん。これは圭一くんのためを思ってすることなんだよ?」 「そうだよ圭ちゃん。熱持ってるし、このままほっといたら本当にまずいって。」 「病気になっちゃったらレナたち悲しいんだよ?」 「何でもします!なんでもしますからぁ!だから切らないでください!」 とうとう泣きながら土下座までし始めた。…本当におちんちんだけで生きているんだろうな、圭一くん… 「何でも、って言ったよね。」 魅ぃちゃんがにやりと笑った。 「どうする?レナ」 「じゃあさ、魅ぃちゃん…」 おしっこ飲ませてみよっか。 「おっ!それいいねー」 魅ちゃんと私は器におしっこを出した 「それじゃあ圭ちゃん一滴でもこぼしたらお仕置きね」 もし一滴も溢さずに飲めたらレナのパンツあげるね そして圭一君は器に入ったおしっこを犬の様にぴちゃぴちゃ舐める 本当に無様だ無様で汚らわしい 圭一君が余りにもゆっくり舐めるので 怒った魅ちゃんが圭一君の頭を掴んで器に押し付ける、その拍子におしっこが床に飛び散る 「く、苦しい魅音、ん何?何回言ったら分かるのかな様を付けろって!」 「申し訳ありません!魅音様」 「全く早く飲んでよ圭ちゃん」 そして圭一君は魅ぃちゃんと私のおしっこを全部飲んだ 「よく飲めたね圭ちゃんでもこぼしたらお仕置きって言ったよね」 「ねぇレナそうだったよね」 うん!そうだよ 「こぼした圭ちゃんにはお仕置きしないとね」 そして魅ぃちゃんと私の2人で圭一君のお腹を蹴ったりお尻叩いたり こぼしたおしっこを舐めさせたりする 圭一君はお仕置きされてるのに嬉しそうな顔をする 「圭ちゃんおしっこ舐めとって」あっ!ずるいよレナのも舐めとって欲しいな 魅ぃちゃんのおしっこ舐めとっている時の圭一君の顔はすごくやらしかった そうだスケべな圭一君にはお仕置きしないとね 「そうだね、圭ちゃんにはお仕置きが必要だね」と魅ぃちゃんが言う 魅ぃちゃんは圭ちゃんにはこんなのはどうかなと言い首輪とムチを 持ってきたそして首輪を圭一君の首につけまるで犬のように四つん這いに させ2人で圭一君の体を引っ叩くドSの魅ぃちゃんは物凄い力で 圭一くんの体を引っ叩く「圭ちゃん、気持ちいいでしょ引っ叩かれると」 魅ぃちゃんがそう言うと圭一君は、ききき気持ちいいですもっと引っ叩いてくださいと 言うそして圭一君を仰向けにさせ勃起したチンポに向かって 鞭を放った、何度も何度も鞭が当たるたび喘ぎ声をあげる圭一君 とっても気持ち良さそうで汚らわしい変態だ。
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圭梨 クリスマス編① 十二月二十二日が終業式だった。その日は沙都子たち(クラスメート二人、あわせて四人)でパーティーを開いた。場所はエンジェルモート。その時はクリスマス当日に休めるようにアルバイトをしていた詩音が、随分サービスをしてくれた。悟史との惚気もお盆に載せて運んできた。頼んでもいなかったのに。 次の日はレナや魅音たち雛見沢のメンバーとのパーティーだった。前日は制服も着ていたし、そうそうはしゃぐことはできなかったけれどこの日は違った。お酒に一発芸、罰ゲームというスリルを楽しむ要素が加わって、とても盛り上がった。富田と岡村のピエロぶりは笑えた。二人には人を笑わせる才能があるようだ。くっつけばいいのに。 目一杯楽しんだつもりだ。 けれど、圧倒的に足りないものがあった。 みんなの言葉を思い出す。 『圭ちゃん?』 『圭一くん?』 『圭一さんですの?』 かぁ~っと顔が熱くなる。 「?マークはついていなかったのですよ。みんな圭一と断定していたのです。梨花は往生際が悪いのです」 空気の読めない神が思考に割り込んできたのでキムチをお供えしておいた。その辛さは声を奪ってしまいかねない程に強烈なものであり、あぅあぅ喘ぐこともできず標的は地に伏すのだ。 「さて。これで準備万端ね」 あと一時間ほどでイヴを迎える。念入りに持ち物をチェックしていたためここまで遅くなってしまった。いつもならとっくに布団を敷いている時間だけれど、全く眠くないのはどうしてだろう。不思議だわ。 「何が持ち物チェックですか。わくわくしながら何度も同じものを出し入れしていただけなのです。二時間もそうしているなんて、ボクは梨花の正気を疑うのですよ」 キムチおいしい。 「もう寝ようかしら」 電灯を消し、ふと思いついてまた点ける。財布に入れた乗車券を光にかざしてみた。自分でも頬が緩んでいくのがわかった。明日、圭一に会えるんだと思って。 「り、りかぁああ……」 「あんたいたの?」 羽入が、文字では表現できないうめき声で私を呼んでいた。その通り何を喋っているか全く不明だったのだけれど、私に向かって墓場から這い出たゾンビのように手を伸ばしていたから名前を発しているのだと判断することにした。 「……」 「え? なに?」 完全に分からない。とりあえず、テレビのコマーシャルのようにキムチの箱を掲げてみた。 頬の横だといかにも辛そうな匂いが鼻孔を漂ってくる。私は何とも思わないけれど。 羽入は白眼になっていた。 さすがに怖いので、今度はシュークリームを……と思ったところで、突然電話が鳴った。 もう寝ようかと思っていたときだけに少し驚く。いつもなら羽入を巻き込んで悪態をつくところだけれど、今日はいいか。それにしても、一体なんだろうこんな時間に。 「はい、古手です」 『あ、梨花ちゃんか……?』 胸が高鳴った。 「圭一っ? どうしたの?」 『起こしちまったかな、悪い』 「ううん、起きてたわよ」 圭一との電話はほとんど夜の九時を超えない。好きに電話をかけ合いたい。でも出てもらえないと辛いのでお互いに確実に居る時間を選んでいる。九時以降はその条件に高確率で当てはまるけれど、一種のけじめみたいなものだ。……まぁ、電話代もままならないものだしね……。 『起きてたのか? もう寝てる時間じゃないか?』 「……あ、明日の準備があって」 楽しみで寝付かれないと、言えるはずもない。 『あ、梨花ちゃんそのことなんだけどな……』 「なに」 圭一の声が、ぐっと低く小さくなった。はっきりしないものの喋りからは何かを言いにくそうにしているというのがすぐにわかった。その時点で、私に対する気遣いが感じられて不安になった。返事も短いものになってしまう。 『明日……その、来ないでくれないか……?』 「……」 声が出なかった。不意に動けなくなってしまい頭だけがふらふらとした。垂れ下がる受話器のコードが目の中で回っている。 『正月には帰れるんだ。それまで、悪いけど……』 「私が、行っちゃいけないの?」 『……り、梨花ちゃんっ、泣いてるのかっ?』 泣いているかどうかは分からない。けれど悲しいのは事実だった。 「……っく」 どうやら泣いているみたいだった。弱くなったものね、と自嘲する。こういう心のもち方は久しぶりな気がする。六月を抜け出せなかった頃、世界をどこまでも客観的に見ていつも考え、行動していた。それは自分の殻に閉じこもる逃げでしかないと教えられたわけだけれど。辛いことがあったとき寄りかかれる場所ができた。それが圭一で、もしもその存在が居なくなってしまえば私はどうなるのだろう。 ふと暗闇の中で一人座っている幼い私が浮かんで、震えた。 『ぐすっ』 これは私じゃない。 「……圭一?」 『あ、ああ。実は風邪ひいちまったんだボゴホッ!』 「……」 『だから、梨花ちゃんがこっちに来たらうつしかねないと思ってだな……。クリスマスの穴埋めも考えながら、こうして電話してる』 あぁ寒い、と少し遠くで聞こえた。圭一の話を理解するまできっかり五秒。 『梨花ちゃん?』 じゃあ、圭一は自分のせいで私が風邪をひくのが嫌だからと考えて明日の予定を取りやめようと電話してきたのね。どれだけ私のことを考えてくれているのだろう。優しいのだろう。なんてなことを私が思うはずもなかった。 「泣いてなんかないわよっ!」 『え、ええ? な、んだよ急に……』 「うるさいわね! なに、風邪ひいたの? 貧弱なことこの上ないわっ。それもイブ前日にだなんて、あんた少しは空気読みなさいよ! 魅音じゃないんだから! ったく……待ってなさいよ、すぐ行くからっ」 『いや、それは……』 「いいからっ。……圭一、寂しいんでしょ」 私が寝込んだときのことを思い出す。自分以外が普段どおりの生活サイクルを送り、ひとり取り残されていると感じたとき、ひどく寂しくなったのだ。圭一が「ひとりで家に居ると寂しいもんな」と笑ってお見舞いに来てくれたことが何より嬉しかった。 『……そう、だな。正直、寂しいな……ん、でも……』 「すぐ行くから」 『あ、いや』 乱暴に受話器を置く。面と向かい合っていれば別だったかもしれないけれど、電話越しでなら圭一に有無を言わさせないことは簡単だった。 「羽入。急用ができたわ。留守よろしく」 「どこに行くのですか?」 「圭一のところよ。朝に出るつもりだったけれど、もう行くわ」 羽入がきょとんとした顔をする。着替え始めていた私がそれを不思議がると、羽入はテーブルの上の切符をしげしげと眺め始めた。あ。 「明日の朝八時が発車時刻なのですよ。東京行きの切符は」 また電話が鳴った。どうでもいいけれど、深夜のコール音はびっくりする。ただでさえ部屋が狭いというのに。暴力的とさえいえる。私は受話器を僅かに持ち上げ、がちゃりと切った。圭一だろうと思ったからだ。すぐ行くと言っておいて、実は家を出るのは明日まで待たなくてはならないという早くも前言撤回が必要な状況に、私はきまりの悪いものを感じてしまったのだった。 「はぁ。明日まで待たなきゃだめなのね」 無駄な気を張った分、脱力も大きかった。テーブルに肘をついてテレビのリモコンに手を伸ばす。ちょうど明日の天気を伝えていた。とはいっても事前に確認してあるので今更見たところで新しく得られるものはない。明日は快晴。電車も通常通り運行できるだろうということを聞いて、私は数日前から安心していたものだ。 完全に目が冴えているので眠ることさえ容易ではなさそうだ。何しろ布団に入ろうという気も起こらない。羽入と、いや羽入で遊ぼうか。私の遠出するときはいつも駄々をこねる。 遊べ遊べと前日にはよく言ってくるのだ。今日もそうだった。 圭一とどちらが一番とは言えないけれど羽入のことも疎かにはできない。 そう思って声をかけようとしたら、当の本人は気持ちよさそうに寝ていた。 「これほど待ち望んだ朝はないわ」 白のコートに身を包み、旅行鞄を片手に玄関に立つ。 薄いピンクのマフラーが首を温めてくれるけれど、それでも冷気は入り込んでくる。からっと晴れたせいか今日の冷え込みは一段と強い。氷の匂いが鼻を冷やし、吐き出した息でそれを温めなおす。バス停に行かないと。 「避妊はちゃんとするのですよ~」 「うっさい」 見送る羽入に手を振ってイブの雛見沢を出た。 帰ってくるのは二十八日。そのときは圭一も一緒だ。 しょうがや梅干、ネギとにんにく。風邪を引いた身体に効きそうなものを。昨日新たに荷物に詰め込んだ。忘れ物はないか、と電車の中でチェックする。やがて発車の合図が鳴る。学祭のときはこのベルが恨めくてしょうがなかったけれど今は大歓迎だ。 早く鳴れ早く進めと念じていただけにいざ動き始めると「レッツゴー!」と言ってみたくなった。当然恥ずかしくてできない。けれどそのとき車両の前の方でタイミングよく、幼い女の子が言ってくれたので私は右手を突き上げることだけをした。 到着は昼過ぎ。 背もたれに深く寄り掛かり、私は去り行く景色を眺めた。 上下巻ある四百頁強の文庫本をあと少しで読み終えようというとき到着した。幾度かの乗換えと、数え切れないほどの発進と停車の感覚が体に刻まれ、少しだるい。雛見沢ほどではないけれど東京にも雪は積もっていた。今もぱらぱらと舞い落ちている。少し汚いような気がする。見上げても誰かがビルの窓から落としているのではないかと疑うほど。 「くっ……少し詰め込みすぎたわね……」 東京はやはり人が多く、荷物の想像以上の邪魔さ加減に苛々してしまう。すれ違うたび追い抜かれるたび、誰かに当たりそうで嫌だった。けれどもうこの駅から歩いて二十分ほどで圭一の家に着ける。……いえ、三十分くらいかしらね。 とりあえず着いたことを連絡しようと思い、公衆電話を目指した。十円玉が無かったので百円玉を使う。鳴ったコール音×十円分だけ圭一に請求しようと思った。果たして。 「百円ゲットー」 ではなくて。 「出ない」 寝ているのだろうか。だとすれば無闇に起こす必要もない、か。風邪なんかに罹ったら動くのも億劫だしね。圭一の部屋はそんなに広くはないけれど、なんでも座っていて手に届くというほどでもないし。……ただ、ノックをしても起きてくれなかったら少し悲惨なことになりそうね。受話器を置いて振り返る。 「よ、梨花ちゃん」 「……」 ポケットから出した片方の掌をこちらに向けている。私のあげたマフラーに顔を埋め、ややくぐもって聞こえたその声は掠れているのがすぐに分かった。鼻も啜っている。 「久しぶり」 「なんでいるのよ」 詰問するかのような口調。驚きよりも呆れ、嬉しさよりも怒り。そういう感情が先に立つ。 病人は動くな、そう言ったのは誰だったか。額に手を当て溜息、吐息の消えかけのところに視線を飛ばす。若干眉間に皺を寄せて。 「へへっ」 悪戯が成功した子どものように笑う。軽く無邪気な笑顔と振る舞いはどこか頭のねじがぶっ飛んでいるのでは、と思わされる。それとも風邪をひいたというのは嘘だったのだろうか。その想像は怖かったけれど、こうして迎えに来てくれた以上心配することはなさそうだ。目下、気にかけるべきは。 「久しぶりね、圭一。体は大丈夫なの?」 「ん? 梨花ちゃん、道分からないだろ?」 ええ、と。微妙にかみ合っていない。まずは圭一の言ったことだけに反応してみる。 確かに過去数度こうして訪れたときはいつも迎えにきてもらっていた。途中、喫茶店に寄ったり買い物をしたりということもあったけれど、東京のお店の豊富さはそうそう遠くに足をのばす必要性を感じさせないわけで。この駅から圭一の家までのルートを大きく外れたことは一度もない。歩いて二十分ほどの道ならばすぐに覚えられる。だとしても迎えにきたいといったのは圭一で、私も賛成だったのだけれど、さすがに体調が悪いときにまでそれを要求するほど私は冷血じゃない。よって道ぐらい知っているから家で大人しく寝ていなさい、とする私の主張は間違っていないわよね。うん、何か圭一のあっけらかんとし た様子にどちらが正しいのか分からなくなってしまったのよね。おまけに言う気もなくなるし。 「? 行こうぜ梨花ちゃん」 圭一がごく自然に私の手をとる。がらがら声でなければ全くいつもことなのだけれど。どうも体の調子に関しては私の主観で判断するしかないらしい。本人の申告は得られていないのだし。圭一は意地を張るタイプだから、答えなかったのは私に心配をかけまいと考えてのことだろう。とりあえずここは圭一を立てておくとして(うん、いい女)、家に着いたら即刻布団に放り込んでやろう。 「へへへっ」 「なによ」 「会えて嬉しいんだよっ」 「……」 じっ、と隣を歩く圭一に視線を移した。 寒さで赤らんだ笑顔が吐息に紛れている。また、額には汗も滲んでいた。歩き出してから圭一が何度かふらつくのを、私は繋いだ手に軽く力を込めて支えていたのだけれど、その瞬間だけつい忘れてしまった。 「お、おお……? へふぶッ!」 こけた。頭から盛大に。 「あ、ごめんなさい」 何の抵抗もなく雪に顔を埋めてしまっている。首を捻りこちらを見た。 「なぜ梨花ちゃんが謝る?」 自分が万全の体調でないことを、理解していないようだった。起き上がるのも辛そうなのに、相変わらず顔には笑みが張り付いている。風邪だと私に電話してきたくらいだから当然自覚症状はあったに違いないのだろうけれど、今ではさも健康であるかのように振舞っている。意識と身体のずれを今の圭一に見る。お酒に酔った状態に近いのかもと私は思った。であれば、早く休ませてあげたほうがいい。多分、これはうぬぼれではなく、圭一は私と再会したことで妙に気分が盛り上がっているのだろうから。 「早く行きましょ」 私も同じように嬉しく、気持ちが高ぶっていた。なのに学祭のときと違って幾分か平静でいられたのは、珍しく子どものような圭一の振る舞いをじっくり見ていたいと思ったからだった。可笑しさと愛おしさで心は穏やかだった。 たまには風邪もいいかもしれないわね。 ようやく到着、と。 「ってなによこれ……」 前に見た雰囲気とは随分違った。なかなか綺麗にしてある、と感想を持った当時が懐かしい。今でもそんな言葉が出てこようものなら私は女として失格に違いない。 入ってすぐが台所でその奥が六畳の和室になっている。半分開いた隙間から覗く、圭一の主な生活拠点である和室の惨状も目にはついたけれど、まずは食器のごった返す流しについて突っ込んだ。 「いったい何日洗ってないのよ」 「んー?」 玄関で私の後ろに立っていた圭一。振り返ると視線が上手いこと定まっていなかった。そうだった。風邪だったのだ。家に着いたことで安心したのか、自分の身体の感覚が舞い戻ってきたのかもしれない。先ほどまでは気持ちが頭の少し上をぐるぐる回っているようだったから。ランナーズハイが急に止まったような感じだろうか。 「ま、まぁいいわ。とりあえず着替えて寝なさい」 「おー……」 足元が頼りなかったけれどそんなに距離があるわけでもないので何事も起きず圭一は奥の部屋に消えていった。ごそごそと億劫そうに衣服を脱ぐ音が聞こえる。というか、襖閉めなさいよ……。 「さて……」 私は荷物を玄関脇に置くと、コートを脱いで袖をまくった。少し寒い。 まずは食器洗い。キッチンの構造自体はうちのものとよく似ている。左右に半歩歩けば料理の全てを賄える、といったところだ。 「スポンジと洗剤が見つからない……」 コンロに置いたままの鍋に箸やスプーンが入ってたり、空の牛乳パックが、胸まで積み重なる不安定な食器タワーの土台を作っていたりと、何かと恐ろしい。流しの底にかすかに見えた丼、それに付着している汚れは落ちにくそうだと一目で悟った。 きょろきょろと探すうちにスポンジはアメーバーのように広がった台拭きの下に発見。洗剤は見つけたと思ったら重みを感じなかったので新しいものを出した。それは一番に開けた棚の中に転がっていたので、助かった。 それから三十分ほど経ち、ようやく体裁が整ったので私はお粥を作ることにした。 出来上がるまで少し時間がかかる。 喉が渇いたので冷蔵庫を開けた。 「予想していたけど……」 ビールだけが入っていた。私はビールは好まなかったので手に取る気は起きなかった。たとえ飲むにしても時刻はまだ十五時過ぎだった。圭一の看病のことも考えると、今日はお酒を飲むことはしないほうがいい。そこでふと気づく。ああ、お酒は、圭一に止められていたのだっけ。気分がいいと、どうしても飲みたくなってしまうのだった。 静かな寝息が、隣の部屋から私の家事の途切れ途切れに聞こえていた。それが心地よく、家事が落ち着いたところで私は、ああ、二人でいるんだと今をかみ締めることができた。 「圭一ー……」 と控えめに和室を覗く。視線を走らせたベッドの上には圭一はおらず……。 「って、なんでこたつで寝てるのよっ」 「……んあ?」 「ちょっと圭一」 間の抜けた声に被せるようにして呼びかける。同時に肩も軽く叩いた。風邪をひいているのにこたつで寝るなんて頭が悪すぎる。体調が悪化の一途を辿るだけじゃない。 「んん~……? んー…梨花ちゃん……?」 「起こしてごめんなさい、でもこたつで寝るのはよくないわよ」 「あーあたま……くらくらする」 「だからちゃんとベッドで」 「ん」 圭一がベッドの方を指差す。気づかなかったけれど、そこはさながら物置のようだった。 主に新聞紙によって埋められており、所々では書籍や雑誌がひょっこりとに顔を出している。足元にはゴミ袋まで……。目線を挙げると、空っぽのペットボトルが窓枠から落ちそうでもあった。なるほど、これでは寝床として使えるはずもない。 「たはは……」 膝元で恥ずかしそうに笑っている。男の一人暮らしなんてこんなもんだよ、といわんばかりに。はぁ、と溜息をついた。こたつのテーブルにもごみが散らかっていた。カップラーメンの空き箱がまるで紙コップのように自然に鎮座している。あと缶詰。そして私は圭一の私服を踏んづけている。またまた溜息が出てしまった。 「圭一、いったいいつから風邪なのよ」 「ん。一週間前くらいかな……」 「それでこの散らかりようなわけね――一週間前?」 一週間も風邪なんて……悪いのは病原菌なのかしら、それとも圭一の身体? けれどこのだらしなさ漂う生活を目の当たりにすると、そんなこともさして気にならなかった。 「これもあって……梨花ちゃんに来てもらうのは気が引けたんだよな……」 「そうね……って勝手に膝を枕にしないで」 折った膝に圭一の頭が乗っていた。おそらくお風呂にも入っていないのだろう。ぼさぼさの髪を撫でようとするけれど、それをしてしまえばこのまま落ち着いてしまいそうなのでこらえた。 「こうして寝かせてくれたらすぐ治ると思う」 案の定そう言う。治るわけもないし。 ……。 「…け、い、い、ち?」 びくりと手の動きがとまる。声色を変えたことに気づいたのだろう。スケベな横顔を睨む。 「おいたはそこまでにしときなさいよ」 圭一はスカートの中に入れようとしていた手を苦笑いしながら引っ込める。同時に私は立ち上がった。頭の置き場を失った圭一が変に呻いたけれど気にしない。さらに邪魔な物を無造作に手にとって床にばら撒いていく。ベッドを空けるのに数分とかからなかった。空けるだけなら、ね。圭一をちゃんと寝かせた後の整理が大変そうだわ。今日はゆっくり休める暇もないみたい。 「ひー。つめてー。梨花ちゃん一緒に寝てくれー」 「すぐに温かくなるわよ。それより、この部屋寒いわね。ストーブはつけないの?」 「つけている間に眠っちまったら怖いじゃないか……」 「じゃあ私が起きていればいいのね」 にやり。 「あ」 「さっさと就寝」 「あーあ……」 布団の中で悔しそうに動き回るのを見て、これは当分寝そうにないわねと思った。ちょうどいい。部屋を綺麗にしている間にお粥も出来上がるだろうから。そのことを伝えると急に神妙になり礼を言った。 それから、散らばった物を一つ二つと手に取り、片付け始めた。 片付けの最中に発見した体温計には三十八度と表示されていた。渡してすぐに圭一は咳を二回。そんなに異常な咳ではない。その証拠に、何かと私の背に話しかけてくる。 「ごめんなーせっかくのクリスマスなのに」 「イブよ」 テレビは聖夜の街並みを映してている。インタビューを受ける人もその後ろを過ぎていく人たちもみんな幸せそうだった。浮き足立っている様子が伝わる。それに比べてこの部屋ときたら……。ちらりと圭一を見る。本当に申し訳なさそうな顔で息を吐いている。不思議と文句を言う気にはならなかった。 「明日までに治ればいいんだけどな」 「……これはこれでいいんじゃないかしら」 ゆっくりと時間が過ぎた。 続く
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「放せっ! 放せよ畜生っ!」 羽交い締めにされながらも俺は叫んだ。 しかし、どれだけ藻掻こうが、その縛が解ける気配はない 「くすくすくすくす。……威勢はよかったけれど、どうやらこれでチェックメイトみたいねぇ……」 心底楽しいと言わんばかりに、鷹野さんが嗤う。 山狗を甘く見ていたつもりはない。 けれど……誤算だった。 鷹野さんが放った銃声に気を取られた一瞬の隙に、俺達は次々と彼らに取り押さえられてしまった。 「三佐。……こいつら、どうしましょうか?」 「うーん。そうねぇ、……どうしようかしら?」 その、まるで夕食の献立を考える程度のような軽い口調が癪に障る。 鷹野さんは真っ赤な唇に親指を当て……、やがてにぃっと笑みを浮かべた。 「ねぇあなた達。見張りや尾行って、忍耐力がいる仕事よねぇ?」 「え? ……はぁ……はい」 鷹野さんは軽やかに、目の前の隊員に密着した。 「あ…………あの? 三佐?」 その豊満な胸を押し付け、色目を向ける。 「そういう辛い任務を続けて……あなた達も、溜まってるんじゃなくて? くすくす」 その不穏な気配に、俺を含め全員の血の気が引く。 「どうせなら、彼女達を好きなようにしたいって……思わない? あら? あなた、結構立派なものを持っているのね。ジロウさんにも負けないくらいよ? うふふふふ」 鷹野さんが目の前の隊員の股間をまさぐるたび、彼からくぐもった声が漏れる。 「どうせなら、彼女達を犯してみたいと思わない?」 「……うっ……くっ。し、しかし……」 この状況下でそんなことを言える程度には、偽善と言われようと、彼にもまだささやかに良心のかけらが残っていたのかもしれない。 しかし、それも所詮は脆い……。 絡み付くように、鷹野さんが彼の頬を撫で、耳元で囁く。 「あらそう……? でも、女としての悦びも知らないままに死んでいくのは、彼女達にとっても不幸なことじゃないかしら?」 それは、三文芝居そのままの台詞にすぎない。けれど、それでも男にとっては暴力的なまでに効果を発揮する。 「これは『慈悲』よ。どうせなら、最後くらい彼女達も楽しんだ方が得じゃなくて?」 その一言で、彼らは欲望を抑えていた……最後の一線を越えた。 ざわざわと下卑た声が、山狗立ちの声から漏れる。 マジかよ……こいつら……本気であいつらを……。 「このっ! ……くっ……ううっ」 「やだ。……やだ。いや……。圭ちゃん……」 「やめて。……やめてよ……。悟史君……」 「にーにー。にーにーっ!」 「鷹野っ! あ……あんたって人はあああぁぁっ!」 みんなの反応は様々だが、それすらも山狗達にとっては嗜虐心をそそる前菜に過ぎないのか……。 ゆっくりと、奴らがみんなへと群がっていく。 「ああ、言っておくけれどRにだけは手を付けちゃダメよ? オヤシロ様の巫女として、最後まで綺麗な体でいてもらわなくちゃ」 しかし、それも聞こえていたことかどうか……。 彼らは獣欲に染まった顔でみんなの服を破き、その音が闇の中に響く。 「いやああああああぁぁぁぁぁっ!!」 「やめっ……嘘……助けて…………圭ちゃ~~んっ!!」 「うっく……このおおおおおおおっ!!」 「ふあああああぁぁぁっ! あああああああああっ!」 悲鳴を上げるみんなに山狗達は群がり、覆い被さる。 その光景に梨花ちゃんは目を背け、唇を噛んだ。 俺の脳味噌も怒りで沸騰して……どうにかなってしまいそうだ。 「くすくす。あら、どうしたの前原君?股間にあるものを立派にして随分と苦しそうだけれど? ひょっとしてお友達が犯される様子を見て、興奮しちゃった? 所詮はオス猿よねぇ。ふふふふっ」 俺の目の前で、俺の大切な仲間達が悲鳴をあげ……泣き叫ぶ。 破られた服の隙間から山狗達はみんなの胸を揉み、そして頬に舌を這わせ、太股を撫でる。 「………………ふざけるな……」 歯を食いしばりながらも、俺は怨嗟の言葉を吐く。 だがしかし、鷹野さんは俺を見て嗤うだけだった。だが……構うものか、これだけは言っておかなければならない。 「――ってない」 「…………なんですって?」 ちゃんと聞いてろよこのクソボケどもが……。何度も言わせるんじゃねぇ。 「………………分かってない。お前達は分かってなあああああぁぁぁいっ!!」 俺は吼えた。そう、それこそ天を裂き大地を割る勢いで叫んだ。 そのあまりの声量に、その場にいた誰もが行為を忘れ、俺に振り返ってくる。 「貴様らの陵辱には萌えが無い。何も分かっていないただの真似事だあああっ!!」 「りょ……陵辱に……萌え?」 鷹野さんが疑問符を浮かべる。どうやら本気で分かってないらしいな。 「おい、俺を捕まえている後ろの……。何でもいい……お前の好みでいいから、陵辱で映えるヒロインを三タイプあげてみろ。制限時間は三秒だっ!!」 「え? ……ええっ!?」 こいつも必死で考えようとはしてみるが……。 「遅いっ! 気弱なメイド、生意気なお嬢様、性に疎いロリっ娘、色々あるだろうが~っ! 修行が足りん修行がっ!! 貴様それでも軍人かっ!? はい、指導指導指導っ!」 「ぎゃっ、うわあああぁぁぁっ!!」 怒鳴りながら俺が踵でげしげしと向こう脛を蹴ると、彼は悲鳴をあげて俺を解放した。ふんっ! 軟弱な奴だ。 どうやら本気で指導が必要らしいな。 「いいかお前ら、陵辱とは何だ? そうだな、合意を得ずに無理矢理に女性と姦通しそして女としての尊厳を踏みにじる行為だ。なら相手がどんな女だろうと関係無い? 女の子が泣き喚いていて、ついでに美人や可愛い娘ならなおよし? うつけ者おおおおぉぉっ!! なら何故、AVのレイプものに様々なシチュものやコスものがあると思ってる!? 消費者がそけだけじゃ得られない何かをもとめているからだろうがっ!! メイドにナースに女子校生、OL、人妻、お嬢様……そのバラエティの豊富さはもはや語り尽くせない。 だがしかしっ!! そのストーリー構成にワンパターンなものがどれだけ多いことかっ!! いきなり拉致ったり部屋に侵入したりではいスタートって、なんだよそれ? なに? AVにそんなもの期待するな? シチュ構成や設定……女優の演技なんてどうでもいいじゃん? 確かにそれもそうかもしれない。基本的に消費者が求めるのはヤってるシーンだけだ。 だがしかし、それだけエロを望む消費者に向けるならそのシーンだけ収めておけばいいじゃねぇかっ! いちいち早送りするのが面倒極まりない。テープやディスク容量、なにより時間の無駄だっ! いや、そもそもっ! 様々なシチュものってのはその過程と各ヒロインの反応を楽しみたいがために見るものだろうがっ!? その点において、シチュものを望む消費者のニーズは前者と異なると言える。 そう、それだけエロもの作品とは異なり、シチュものにはリアリティを持たせるストーリー性と演技力が不可欠なのだ。そこに手を抜いた作品って……おい、じゃあお前ら何のためにそれだけのバラエティを用意したんだよ? 中途半端だ本末転倒だろがあっ!! エロなめんじゃねええぇっ!! 金取って飯食ってるプロならプロらしくきっちりと仕事しろおっ!! 女優が泣いていて男優が怒鳴り散らすだけでレイプものだなんて名乗るお手軽作品、本官は断じて認めませんっ!! 過程をすっ飛ばして濡れ場だけを書いた首すげ替えエロSSなんて書いた日にゃ、こっちはスルーか下手すれば叩きの嵐なんだからなっ!? 何? オットセイ☆をおっきさせて言っても説得力が無い? ふっ…… 甘い甘い、俺のオットセイ☆はまだまだこんなもんじゃない。今のはせいぜい出力20%といったところだ。 つか、アニメやゲームのパロものAVの惨さは異常だと思うのは俺だけか? 完全に原作と別物っていうかもはやストーリーもシチュも似せる気無いだろ? オタクがどこで反応してるか探る気ゼロだし ……そんな仕事で金が取れると本気で思ってるのか? いやもう……むしろカツラなんてかぶらない方がいいですから……不自然だし……。orz それともカツラ不要派は俺だけですか? だいたい、三次元でオレンジや緑の髪がいるわけ無いだろ? 設定では沙都子なんかも黒髪らしいのに……。 おっと、話がずれたな。つまり、俺が言いたいのは多彩なシチュ、多彩なヒロインに合わせて責め方も変えねばならんということだ。 ただ襲うだけなら猿でも出来る。日光猿軍団に入門して反省ポーズでも取っていろ。 聞いているのか貴様らっ!? 今まさに貴様らがしようとしているのがそれだ。 レベルが低すぎる、恥を知れえええええぇぇぇぇっ!! 俺が教育し直してやる。今夜はただで帰れると思うなよ? 返事は押忍かサー・イエッサーだっ!!」 しん と、その場が静まりかえって……。 ……ったく、つくづくこのボンクラどもはっ!!!! 「返事はどうしたっ!!」 『……さ……、サー・イェッサーっ!!』 よーし、敬礼だけは一人前だな。 俺はレナへと近づき、手で合図して周囲にいた山狗をどかせた。 「まずはレナだ。…………そうだな。レナは――」 ごくり と山狗達は唾を呑んだ。 「あ、あの……圭一君?」 怯えるレナの前で、俺は目を細めた。 服を破かれ、半裸になってへたり込むレナの顎を持ち上げ、俺は怒張を取り出した。 「レナ……奉仕してしてくれよ」 「ほ、……奉仕って……なに……かな? かな?」 瞳を潤ませ、顔を蒼白にしながら……そのくせ媚びた笑顔を作りながらレナは俺を見上げてくる。 ああ、いい表情だ。今すぐにでもぐちゃぐちゃにしてやりたくなるほどに……そそるぜ、レナ。くっくっくっ。 俺は自分のものをレナの顔の前に持っていく。 「んー? 奉仕か? そうだな、俺のものをかぁいがってくれればいいんだぜ。……簡単だろ?」 「か……かぁいがるって、どんなこと……するのかな? かな?」 レナの頬に怒張の先を押し付けると、レナはびくりと震えた。 「そうだなあ。ウブなレナには分からないか……」 「う、うん……レナ、全然分かんないんだよ? だから――」 「レナの口で俺のものをくわえ込んだり、かぁいくぺろぺろと舐めてくれればいいんだ。丹念に……優しくな」 俺の台詞に、レナは思わず悲鳴を上げる。 「や……やだ。そんなのやだ……。お願い圭一君、許してよ……」 涙目になりながら、レナは俺に懇願した。 「いいのかレナ? そんなこと言って……」 くぅ とレナが小さく呻いて……涙が一筋、その目から零れた。 ……やがて、レナは覚悟を決めたのか、ゆっくりと俺のものに顔を近付けて……舌を伸ばした。 たどたどしく……しかしそれでも懸命にレナは俺のものに奉仕する。 「んっ……はっ……んぶぅ……ふぅっ……んんっ」 生暖かい唾液の感覚……ときおり俺のものに歯が当たり、その度に上目遣いに哀願するその目が、俺の情欲の炎を更に燃え上がらせていく。 俺のものが脈打つたび、レナの瞳に怯えの色が浮かんだ。 「ほら……レナ。何やってんだよ。もっと舌を丹念に絡めて……手も使うんだよ」 「んぐっ。んぐぅううううぅぅぅっ!」 レナの頭を掴み、俺はぐいぐいとレナの口腔を肉棒で犯した。 ぽろぽろとレナの目から涙がこぼれる。 ああ……いいぜレナ……最高だぜ。 このままイってしまいたいくらいだ。 しかし、俺はそこでレナの口から俺のものを引き抜いた。 「もういいぜ。レナ」 「う……うん。それじゃあ、もう……」 ほっとしたような表情を浮かべるレナに、俺はにやりと笑みを浮かべた。 「ああ、今から挿れてやるぜ」 途端、レナの顔から血の気が引いた。 「そ……そんなっ! 圭一君。約束が違う……」 「うるせぇっ! そんな約束、した覚えが無ぇなぁ? ぐぇへへへへぇぇぇっ!」 「やだああああぁぁぁぁぁっ!!」 俺は嗤いながらレナに覆い被さっていった。 じたばたとレナが藻掻くが、知った事じゃない。 強引にレナの股に手を伸ばし、パンティを引きちぎる。 「やだっ! やだやだ……お願い。許して……許してえええぇぇぇっ!!」 泣き叫ぶレナの上半身を押さえ付けながら、怒張をレナの入り口へとあてがう。 くそっ……やっぱり固いな……だがっ!! 「うっくっ。……うあああああぁぁぁぁぁっ!?」 びくんっ とレナの体が大きく痙攣する。 俺はレナを強引に貫いた。 濡れてもいない……しかも初モノのレナの秘部は、ぎちぎちと俺のものを締め上げてくる。すげぇ……こいつぁ気持ちいい。最高だ。 まるで金魚か何かのように、レナが俺の舌でパクパクと口を開けている。 俺はレナの乳房を鷲掴みにする。……くくっ。こいつもいい。実に俺の手によく馴染む。あつらえたかのように手のひらに吸い付いてくる……。 むっちりとした弾力が堪らねぇぜ。 夢中になって俺はレナの胸の感触を味わう。 「ひっ……うっ…………うぅ……」 呆然とした表情で、レナは涙を流し続ける。 そして俺は、ピストン運動を開始した。 ガチガチに固くなった怒張で、レナの中を丹念に味わう。膣内のヒダを亀頭のカサで擦り上げていく。 「やだ……やだぁ……こんなの…………やだぁ。もう……許してよ。痛いの……本当に痛いの。お願い……だから……」 知ったことかよ。 レナの嗚咽が……ははっ……益々堪らねぇぜ……。最高だぜレナ。お前は最高だっ!! 「はっ……うぅっ……あっ……あああんっ」 「なんだよレナ? その声……感じてるのか?」 「はぅっ!? ……うぅ……っく……そんなこと…………あるわけない」 「まあ、どっちでもいいけどよ?」 望まないとはいえ、執拗に性感帯を責め続ければ、それは声も出るってもんだよなあ? くっ……しかし、俺ももう限界か。 怒張の奥で、今か今かと熱い迸りが駆け上ってくる。 「さあ……レナ? イクぜ? 出してやるぜ? たっぷりと受け止めろよ?」 「えっ!? あっ…………嫌ああああああぁぁぁぁ~~っ!!」 レナの悲鳴を聞きながら、俺は精液をレナの中に注ぎ込んだ。 (妄想:レナ編終わり) 「――と、いう感じはどうだ? メインヒロインで正当派な娘こそ、正攻法でスマートに心を折るのがポイントだ」 『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!』 俺がレナを陵辱するパターンの説明を終えると、山狗達は歓声をあげた。 くっくっくっ……どうやら少しは学んだようだな。 「じゃ、……じゃあ、このポニーテールの娘はどうするんで?」 「魅音か……? そうだな……魅音は――」 「け、……圭ちゃん?」 俺が舐めるように視線を向けると、魅音はびくりと体を震わせた。 俺が魅音の前に立つと、魅音は怯えた表情を浮かべた。 「ああっ! いやっ! やだっ! やめてよおおっ!」 魅音の叫びに酔いしれながら、俺は魅音の上着を破いていく。 ブチブチとボタンが飛び散り、その大きな胸がこぼれ落ちた。 羞恥心に魅音は顔を真っ赤にさせ俯く。腕は背中に回して拘束しているので、胸を隠すことは出来ない。 「やだ……やだっ! 見ないで……見ないでよ」 しかし俺は魅音の声を無視してブラジャーを剥ぎ取る。 白く、たわわに実った双丘が露出する。 「くっくっくっくっ。……こんな立派な乳しておいて、見るなって言われてもそれは無理な相談だなあ」 「うっ……くっ…………ううぅ」 俺は魅音の胸を鷲掴みにし、乱暴に揉みしだく。 どこまでも柔らかいその感触が心地いい。ボリュームのある魅音の胸は実に揉み甲斐があるなあ。 「や……いやっ! そんな……強すぎるっ! お願い……お願いだからもっと優しく……」 「へえ? ……その割には感じてるんじゃないのか? 乳首もこんなに固く尖らせてるぜ?」 俺の手のひらから、コリコリとした感触が伝わってくる。 「そっ!? ……そんなわけ……ない。そんなわけないもの。…………はぁ……はぁっ」 自信なさげに呻きながら、魅音が内股を擦り合わせるのを俺は見逃さない。 にやりと俺は笑みを浮かべた。 「きゃああっ!?」 俺は魅音のスカートの中に手を突っ込み、そしてパンティの脇から魅音の秘部へと手を伸ばし…………もぞもぞとまさぐった。 恥毛を掻き分け、ぷりぷりした割れ目を指で丹念になぞる。 擦りあげる度に、魅音は身悶えた。 「んんっ……んっ……ふぅっ……」 俺は魅音のくぐもった声を聞きながら……ときに強く、そしてときには甘く、魅音の秘部を愛撫し続けていく。 懸命に声を押し殺そうとするものの、それも長く続くはずもない。 「や……はっ……ああっ」 魅音の口から甘い吐息が漏れ、俺はにやりと笑みを浮かべた。 「んん~? じゃあ、お前の下の口から溢れるこれはなにかなあ?」 俺は魅音の秘部から手を抜き、指に絡み付く粘液を見せる。 「そ……それは……その……」 「……お前はこんな状況で濡らす変態女なんだよお~? ぐっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」 もじもじと身悶えする魅音にそう告げてやると、彼女はぽろぽろと涙をこぼした。あー、この表情がいいぜ魅音。実にそそる。 「じゃあ……いくぜ?」 「い……いくって……?」 怯えた瞳を浮かべる魅音に、俺はにやりと笑いながら告げてやる。 「決まってるだろ? お前のこの濡れ濡れになったお***に俺の***をブチ込んでやるんだよおおおぉぉぉっ!!」 「や……嫌ああああぁぁぁっ!!」 暴れる魅音に覆い被さり、俺は魅音の膣内に怒張を埋め込んでいく。 「あっ……ふぅ……んんんっ!! あああぁぁっ!!」 ずぷずぷと、心地よい抵抗感と共に軟らかい肉の感触が俺のものに絡み付いてくる。くはははは……この感覚、やはり何度味わっても堪らねぇぜ。 「あっ……んあっ…………くぅんんんっ!!」 俺の下で魅音が目を瞑り、唇を噛み締めながらも甘い呻き声を漏らしてくる。 俺が腰を振るたびに、敏感に魅音の体が震える。くくく……いい反応だ。体は正直ってやつだなぁ~~魅音~~っ? 更に、俺は魅音の乳房に手を置き、そしてその乳首に吸い付く。 「ひゃっ……あぅぅうっ!?」 おお~~っ!? やっぱり魅音の乳は最高だぜっ!! たっぷりとしたボリューム、柔らかさ、滑らかな肌触り……どれをとっても一級品だっ!! 「やっ……だぁっ! そんな激しく……吸わないで……えっ!」 「馬鹿言え、これでやめろって言われてやめられる男がいるわけねぇだろ? こうなったらとことんまで犯りつくしてやるぜえっ!」 「い……いや、いやあ…………はっ……あんっ……んんっ!」 魅音の甘い呻き声をBGMに、俺は心ゆくまで魅音の膣内を俺のもので掻き回し、そして体を貪る。 そのあまりの気持ちよさに、俺が達するのもほとんど時間を必要としなかった。 「うくっ……イク……イクぜ魅音? しっかりと受け止めろよっ!?」 「いやっ……あああああああぁぁぁぁぁ~~っ!?」 歓喜に身を震わせながら、俺は魅音の膣内へと欲望を吐き出した。 (妄想:魅音編終わり) 「――と、いう感じか? M属性があれば、言葉攻め等で羞恥心を最大限まで高め、そして性的興奮に抗えないようにするまで墜としていくわけだ」 『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!』 俺が説明を終えると、山狗達は歓声をあげた。 よーしよし、覚えのいい奴らだ。 「じゃ、……じゃあ、今度はこの気の強そうなのは?」 「詩音か……? そうだな……詩音は――」 「け、……圭ちゃん?」 俺が下卑た嗤い声をあげると、詩音から血の気が引いた。 「……うぅ……このっ……。殺してやる……殺してやるぅ……ううっ」 嗚咽混じりにポロポロと涙を流しながらも、詩音は悪態を吐くのをやめようとはしなかった。 後ろ手に腕を拘束されたこの状況では、それぐらいしか抵抗する方法が無いものな……。 無駄だというのに……。 「くっくっくっくっ……。いい目だ……隙あらば噛み殺さんといわんばかりのその鋭い目が堪らねぇぜ」 「ぐぅ……うううぅ」 ロクに濡れてもいない処女穴へと無理矢理挿入したんだ。痛くて堪らないはずだというのに……この活きの良さというのは、堪らねぇなあ。 にたにたと嗤いながら、俺は詩音の乳首を捻りあげる。 「うあああああぁぁぁぁぁぁっ!?」 固く……それでいてどこか甘く尖った詩音の乳首を引っ張ると、詩音の豊かに育った乳房も踊る。 「ひゃはははは。すげぇ締め付けだな。俺のものが千切れそうだぜ。乳首つままれて***締めるってどういう体してるんだよ? ……じゃあ、これは…………どうだっ!?」 パァン 「あうっ」 乾いた音を立てて、俺は詩音の頬を平手打ちした。 「くっくっくっ……面白えなあ……また締め付けてきやがった」 「ううっ……ぐっ……ううう……この……ど畜生が……くっ……うっ」 ぎちぎちに締め付ける蜜穴も最高だが、それだけじゃない。ボリュームあるその肉も最高だ。 たっぷりとした詩音の乳房を鷲掴みにしたまま、揉みしだいていく。むっちりとして張りのある弾力は、どれだけ弄ぼうと……何度でも俺の手のひらを押し返す。 「畜生……畜生……畜生……」 羞恥と怒りに真っ赤になる詩音の表情が……そして怨嗟の声がどうしようもなく俺の嗜虐心を煽る。 もっともっと彼女の泣き声が聞きたくて、何度も……何度も腰を打ち付ける。悦ばせるためじゃない……ただ、俺の快楽のためだけだ。 「ひぅっ!? ……んんっ」 幾度となく強引に蜜肉を突いているうちに、さすがの詩音も少しずつ快楽を味わい始めてきたらしい。 その口から漏れる嗚咽に、甘いものが混じるようになってきた。 「んぐぅうううううぅぅぅ~~~っ!!」 今度は乳首を強めに摘み、磨り潰すようにこね回す。 よほど痛いのか、詩音はびくんびくんと体を跳ね上げてきた。くくくく……同時に俺のものに、蜜肉が絡み付いてきやがった。 狂乱状態になりながら首を振る詩音に体重を掛け、そのまま乳首をこね回しながら俺はもう一度強く腰を打ち付け……。 「うあああああぁぁぁぁぁ~~~~っ!!??」 熱くたぎった精液を彼女の膣内に射精した。 どくんどくんと怒張が脈動して、詩音の中を精液が満たしていく。 「ひっ……くっ…………うううぅ……よくも……そんな……」 俺の下で、詩音は呆然と……表情を失った。 そして、光を失った瞳で呟いてくる。 「絶対に許さない。殺してやる……殺してやる……」 くっくっくっ……そうだな……今度は尻でも叩いてやろうか……。 どうやら、まだまだ楽しめそうだ。 (妄想:詩音編終わり) 「――と、いう感じはどうだ? 魅音やレナとは違ったタイプ……反発してくる女には苛烈な責め苦を与え続け、その反応を愉しむんだ……」 『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!』 俺が説明を終えると、山狗達は歓声をあげた。 うむうむ……だいぶ分かってきたようじゃねぇか。 「じゃ、……じゃあ、このチビ娘はどうするんで?」 「沙都子か……? そうだな……沙都子は――」 「あ、あの……圭一さん?」 俺がわきわきと手を動かすと、沙都子の頬が引きつった。 大逆転!!―皆殺し編―(後編)へ続く
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そろそろ頃合いだろうか。オーブンからは甘い匂い。テーブルには軽くつまめるようにサブのお菓子も準備完了。 後はお湯が沸くのを待つだけ。 この間買った紅茶でおもてなし。私の大好きな甘い香り。 室内に漂う甘い香りにうっとりしていると、ピンポンと呼び鈴の鳴る音。 急ぎ足でドアへ向かい扉を開ける。 「どうぞ。もう少しで妬き上がるからね」 「なんか甘い匂いがするなーって思ってたら、お菓子作ってたんだね。何作ってんの?」 「まだ内緒。出来上がってからのお楽しみだよ。」 魅ぃちゃんは口を尖らせながら、えーとか、ちぇーとか言っていた。それがまるで小さな子供がする仕草に余りに酷似していたからつい笑ってしまった。 「何ー?レナ?何か面白い事でもあったのー?」 「ううん。なんでもないよ。ただ魅ぃちゃんかぁいいなぁって思って。」 「ちぇー。そうやっておじさんをバカにしてー。そんな悪い子には園崎直伝!くすぐり攻撃~」 そうやってじゃれあっている間にお湯が沸いた。 「じゃあ魅ぃちゃん。お湯が沸いたみたいだから私は紅茶とお菓子準備するよ。」 焼き上がったお菓子を味見。うん。大丈夫。 紅茶も淹れたし、後は食べるだけ。 「魅ぃちゃん。食べよ。今回はちょっと甘さ控えめにしてみたんだけど、どうかな?」 「うん!確かにいつものよか甘さは控えめだけど、それの効果も相まってか余計にこの紅茶にあうねぇ~。最高!最高!」 「喜んでもらえてうれしいな。おかわりもあるからたくさん食べてね。」 魅ぃちゃんは本当に美味しそうに食べてくれてる。そんな魅ぃちゃんを見てると何だか私まで嬉しくなるような気がした。 「あちち。レナ~?ちょっとおじさん舌火傷したみたい。水もらえるかな?」 「もう。魅ぃちゃん。そんなにがっつかなくても食べ物は逃げて行かないよ?」 水の入ったコップを持って魅ぃちゃんに渡そうとした時不意に何かにつまづいた。 そのまま水は魅ぃちゃんへ 「ごっごめんっ…魅ぃちゃん大丈夫!?」 へくしっと小さなくしゃみが一つ。 悪い事をしてしまった。早く着替えさせないと魅ぃちゃんが風邪をひいてしまう。 「魅ぃちゃん。服脱いでもらえるかな。」 げようとする魅ぃちゃんの体を捕まえる。 「えっ?なに?なに?何!?何すんの!?いや、マジで大丈夫だかんね!?脱がせなくていいからね!?」 「魅ぃちゃん。そんなずぶ濡れでいつまでもいたら風邪ひいちゃう。それに体も冷えてる。うちのお風呂貸してあげる。その間に私が服乾かしておくから。」 それでもなお嫌がる魅ぃちゃんを見て私は決心した。 ―――強制的に脱がせる。 有無を言わさずにシャツのボタンを外していく。 一つ、二つ、みっ…手が捕まれた。魅ぃちゃんが今にも泣き出しそうな顔でこっちを見てる。 胸元を片手で抑え目を潤ませる魅ぃちゃんはひどく扇情的だと思った。 魅ぃちゃんから目をそらし作業を続けていく。 この時には抵抗はなくなっていた。魅ぃちゃんは顔を真っ赤にして俯いていた。 ボタンを全て外し終わりシャツを脱がせようとした時にもの凄い抵抗を受けた。 「レナっ…背中は…背中は見ないでっ…」 消えてしまいそうな小さな声。 「知ってると思うけど私の背中には刺青あるんだ。………刺青ある人なんか嫌でしょ?それにこの刺青は園崎次期頭首の証。レナには次期頭首の私じゃなくて部長として、親友としての私を見て欲しいんだ…」 ポツリポツリと呟くようにして言葉を紡いでいく。そんな魅ぃちゃんは今にも壊れてしまいそうで、何とかして守ってあげたくなった。 「大丈夫。刺青があったって何があったって魅ぃちゃんは私の親友。だから大丈夫……私を信じて。」 半泣きだった魅ぃちゃんは今はもう完全に泣き出していて。そんな彼女を私は強く抱き締めた。頭を撫でてあげると、嬉しいような恥ずかしいようなそんな顔で魅ぃちゃんは笑ってくれた。 ホックを外し、シャツを脱がして表れた傷一つない綺麗な肌。その背中には大きな鬼の刺青が刻まれていて、だけどそれすら美しいと感じてしまう。 「レナ…?驚いたでしょ。だから、見ない方がいいって―――」 魅ぃちゃんの声を遮るようにしてその上に声を重ねる。 「魅ぃちゃんの肌とっても綺麗だなーって思って。真っ白で傷一つなくて、羨ましいくらいだよ。」 ね?と小首を傾げながら魅ぃちゃんに笑いかけると顔を真っ赤にしたままそっぽを向いてしまった。 「レナはさ、私なんかよりもずっと女の子っぽいし、可愛いし、優しいし、私は、ガサツだし、女の子っぽくないし、それにいろいろっ……」 両手で頬を掴みこちらを向かせる。 「魅ぃちゃん。魅ぃちゃんがほんとは誰よりも女の子らしいこと、私が知ってる。圭一君は気付いてないと思うけど、私は知ってる。だから…そんな悲しい顔しないで。」 圭一君が知らなくても私が知ってる。圭一君が分からなくても私が分かってる。だから大丈夫。私の気持ちが魅ぃちゃんに伝わらなくたって、気付いて貰えなくても私は魅ぃちゃんの親友として傍にいられるだけで充分だから。 「ホラ、魅ぃちゃん。涙拭いて。泣いてばっかいると顔がいつも泣きべそかいてるような顔になっちゃうよ?それにさっきお風呂沸いたみたいだから、ゆっくりあったまって来てね。」 魅ぃちゃんは目元をグシグシと拭って「ありがと」と言ってから脱衣場にパタパタとかけていった。 魅ぃちゃんは私の親友。転校してきたばかりで右も左も分からなかった私に初めて声をかけてくれた人。 魅ぃちゃんは私を太陽みたいに照らしてくれた人だから私は魅ぃちゃんを傷つけるあらゆるものから彼女を助けてあげたい。 「魅ぃちゃん~?お湯加減はどう?」 「大丈夫!大丈夫。いいお湯だよ。おじさんの日頃の疲れもバッチリとれちゃうねぇー。………あのさレナ。さっきシャワー使おうとしたらお湯が出ないんだけど、ちょっと見てくれるかな?」 「うん。ちょっと待ってて。すぐ見るから」 調子を見ようとしてしゃがみこんだ瞬間何故か蛇口をひねっていないのに上から水が降ってきた。 「わっ!魅ぃちゃん、冷たいよ。それにわざと蛇口捻るなんてすっごく意地悪なんだよ。だよ」 「えへへーさっきのお返しだもんねー。」 風呂場に魅ぃちゃんのやたら楽しそうな声色が響く。少しイラっとしたが子供みたいに感情を表にする魅ぃちゃんを見てると怒る気力も失せた。「もう。魅ぃちゃんのせいでずぶ濡れだから私着替えてくるね。」 そう言い残し、風呂場を出ていこうとすると腕を捕まれた。 「あの…さ、レナも…お風呂入って体あっためた方がいいんじゃないかな…?せっかくお風呂沸いてるんだしさ。」 どうしようかと決めかねて思案していると 「レナも一緒にお風呂入ろうよ…?」 背後からの誘惑に負けた私はお風呂に一緒に入ることにした。 といっても本来私の家のお風呂は二人用ではないために二人で入るとかなり狭い。 必然的に私と魅ぃちゃんの距離はかなり近かった。 この近さと異様なシチュエーションのせいだろうか、魅ぃちゃんで少し遊んでみたいと心に魔がさした。 魅ぃちゃんの髪をくるくると弄びながらどんな事をしてあげようかと考える。 考えてもなかなか思いつかなかったので魅ぃちゃんの反応を見ながら決めていけばいいやと思った。 背後からスーッと魅ぃちゃんに近づき、さりげなく腰に手を回し顎を魅ぃちゃんの肩に乗せる。 「魅ぃちゃーん。お風呂きもちーねー。私いつも一人で入ってるから、こうやって二人で入るのって新鮮で何だか楽しいな。」 言いながら腰に回した手を下にずらす。 「あっ、ははは、そっそうだよね!レナは一人っ子だもんね!私は詩音がいるから、よく昔は一緒に入ってたりしてたかな~!」 魅ぃちゃんは私から逃れようと頑張ってる。心なしか声も震えてる。逃げようとしたって元々大した大きさもないお風呂だから逃げ場なんかないのに。 浴槽の縁に手をかけ中から出ようとする魅ぃちゃんの手を掴み強引に湯船に戻す。 「魅ぃちゃんはレナとお風呂嫌なのかな?」 「えっ!?ちっちがうよ!ただレナとお風呂なんて初めてだし…その、なんか頭がぽーっとしてきて…」 あぁもう。魅ぃちゃんってほんとにかわいいな。詩ぃちゃんが魅ぃちゃんで遊ぶ気持ち分かるかも。でも私は詩ぃちゃんみたいにえげつない遊びしないんだよ。 あくまでも合意の上で……ね。 いきなり過激な事しちゃうと魅ぃちゃんが逃げ出しちゃうかもしれないから最初は軽めに留めておこう。 「魅ぃちゃん。のぼせちゃった?ちょっと湯船から出た方がいいかもね。あっそうだ。私が背中流してあげるよ。」 「いっいいよ!体洗う必要ないし。」 「ねぇ魅ぃちゃん。シャワーの水私にかけたの誰だっけ…?」 私がそういうと魅ぃちゃんは、うぅっと小さくうめいて「分かった」と言った。 ボディソープを手に取りそのまま魅ぃちゃんの背中にすり付ける。 「ひゃっ。な、なに?」 「なに?って…背中洗ってるんだよ。竜宮家ではこうやるのが常識なんだよ。」 「えぇ?嘘だぁ。せめて寝言は寝てから言ってよぉ~。」 「私はいつでも本気だよ。魅ぃちゃんにはぜーったい嘘なんかつかないんだから」 そのままスポンジで背中を洗う要領で両手を魅ぃちゃんの背中の上で上下させる。魅ぃちゃんの背中はスベスベでとても気持ちが良い。 「んー。背中はもう充分だね。じゃあ次、前いこっか。魅ぃちゃん、前向いて」 「まっまえっ!?背中だけって言ったじゃん!前なんか恥ずかしくて無理だよぉ…」 恥ずかしいのは魅ぃちゃんだけで、レナは全然恥ずかしくないんだよーと言い訳にならない屁理屈でやり込め強引に前を向かせる。 「はい。魅ぃちゃんスポンジ。これで体洗ってるところ私に見せてね?」 私に洗われるよりマシだと思ったのかちょっと安心したような顔でスポンジを私の手から受けとる魅ぃちゃん。――――魅ぃちゃん。スポンジ使うって事は今まで両手で隠してた部分私に見せるって事なんだよ。それに今洗わなくても後でしっかり洗ってあげるつもりだし。 じっと魅ぃちゃんが体を洗う様子を食い入るように見つめる。 「れっレナぁ…おじさんそんなに見つめられながらだとちゃんと洗えないんだけどなぁ…」 にこりと笑みを作り、続けてと促す。しばらく眺めていた後、魅ぃちゃんが終わったよと呟く。 「魅ぃちゃん。そこは洗わないの?」 両足の間を指差す。もちろん、控えめにそこを洗う仕草もしっかり見ていた。これは私のあえての意地悪。 「あ、洗ったよ。レナだって見てたじゃん。」 そうだっけととぼけながら、魅ぃちゃんのそこに指を滑りこませる。 「あれ?魅ぃちゃん。ここ何だか凄くヌルヌルしてるよ。ちゃんと洗ったのにおっかしいねぇ?」 魅ぃちゃんは無言で俯きながら私の指がこれ以上進入するのを両足を固く閉じて拒む。 「やっぱり洗えてなかったんだねー。嘘はよくないよ。そんな嘘つきの魅ぃちゃんにはお仕置きが必要かな?」 嘘なんかついてないと涙声で否定する魅ぃちゃんの唇をキスで塞ぐ。そのまま舌を強引に中に入れ、魅ぃちゃんの舌と絡める。 唇を離すと魅ぃちゃんの顔は今まで以上に真っ赤だった。ちょっと呼吸も荒い。 「れっレナ、やだよっ…こんな事…。何でこんな事するの…?」 それは魅ぃちゃんがあんまりにもかわいいからだよ。と言ってから勢いをつけて床にそのまま押し倒した。 「えっ!?えぇ?やだよっレナ!やだってば!」 必死で暴れる魅ぃちゃんを抑えつけて、そのまま耳を甘噛みすると魅ぃちゃんはくすぐったそうに体を捩る。 気持ちいい?と軽く問いかけると少し間を置いた後小さく頷いた。 軽めのキスをしながら手は徐々に下へ。途中なんだか硬いものにぶつかり位置からそれが魅ぃちゃんのアレだと分かった。 ぐりぐりと押し潰したり、弾いたりして遊んでいると時折魅ぃちゃんの押し殺したような声が聞こえてくる。 「魅ぃちゃん。声我慢しなくていいよ。」 「あ…でもっ、やっぱり…あのっ、恥ずかしいから…出せないよ…」 聞きたいから声出して、と胸の突起を一際激しく弄ぶと甘い声と共に魅ぃちゃんの体がびくりと痙攣する。 「レナぁっ…!もう…やめっ、やめてよっ、お願いだからっ…」 「嘘だよ。魅ぃちゃん。だって魅ぃちゃんすっごく気持ち良さそうだもん。証拠にほら…こんなに溢れてきちゃってるよ。」 魅ぃちゃんの秘部から愛液を指先で掬いそのままペロリと舐める 「そんなの…汚いから舐めちゃダメだってば…」 汚くなんかないよ。と言いながら魅ぃちゃんの秘部に吸い付くようにして舌を這わせる。じゅるじゅるとわざと音をたてると魅ぃちゃんは断続的に小さな嬌声をあげながら私から逃れようとした。 「ふぁっ…んっ、レナ、レナ…そんな所なめちゃっ…だめ…だって…………んぅっ」 びくっと魅ぃちゃんの体が痙攣する。 もう限界が近いみたいだった。だけどこのままイかせるのも面白味にかけるなと思ったので、またもや少し意地悪をしてあげようと、おもむろに魅ぃちゃんから離れ湯船に戻る。 魅ぃちゃんがそんなに嫌がるならレナは大人しくしてるよーと心にも無いことを言いながら魅ぃちゃんがしびれをきらすのを待つことにした。 しばらくすると魅ぃちゃんはチラチラと視線を送ってきたり、体が疼くのか時々身を捩らせたりしている。 もうそろそろか。のぼせたみたいだからもう出るね?と扉に手をかけると魅ぃちゃんが真っ赤な顔でこちらを見ていた。どうしたの?と声をかけると下をみたままモジモジしている。 「言ってくれなきゃ分からないよ。」そう言い残し、扉に再度手をかけると、小さな声で「だ----ら、-----レナに-----を-----して欲しい」と言うのが聞こえた。 聞こえなかったので再度言ってくれるよう頼むと小さいけどさっきよりハッキリした声で「レナにイかせて欲しい」と聞こえた。 よく出来ましたと、言うと同時に入り口付近を軽くかき回した後に一気に中に指を入れた。グチャグチャといやらしい音をたてながら指を増やしていくと、抑えきれなくなった魅ぃちゃんの喘ぎ声がひときわ聞こえる。 指で奥まで突いてあげると元から狭い魅ぃちゃんの中がぎゅうっと収縮し私の指を抑えつける。 「レナっレナ…!もっ、もう限界っ…お願いっ、お願いだから、もぅ我慢できないよ…」 魅ぃちゃんの一番敏感な部分を刺激すると魅ぃちゃんは背中を大きく反らせて達した。ふと指先に温かい感触。見ると魅ぃちゃんの秘部からは黄金の水が勢いよく出ていた。 しゃあぁぁという音だけが響く。排泄を見られたのが余程ショックだったのか魅ぃちゃんは嗚咽をもらしながらだだ「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝るばかりだった。 大丈夫だよ。と体を抱き締めながら魅ぃちゃんの体を洗って綺麗にする。 魅ぃちゃんの泣き顔を見ていると少しやりすぎてしまった事に対して罪悪感が募ってきた。 後始末をした後背後から魅ぃちゃんを抱き抱えるような形で湯船に浸かっていると、魅ぃちゃんが指を私の手に絡めてきた。 「魅ぃちゃん?どうしたの?」 「レナ、私の事嫌いになったでしょ…?こんな歳になってお漏らしする子なんて嫌だよね?」 「ううん。そんなことないよ。それに私もちょっとやりすぎちゃったしね…。」 ごめんね。と言いながら魅ぃちゃんの背中に頭をコツンとぶつける。 しばらくそのままでいるといつの間にかこっちを向いていたのだろうか、魅ぃちゃんがモジモジしながら私の顔を見ていた。 「ん…。じゃあさ、今日の事は私たちだけの秘密って事にしようよ。他の誰も知らないレナと私の秘密。」 そうだね。と言った後しばらく笑いあい私たちは風呂場を後にした。
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※途中からです。 前編はこちら 死者の時間【前編】(黒入×沙) これは勝機だと、沙都子は考えた。 雛見沢大災害が人為的なもので、入江がそれに関与しているとなれば、 彼は重大な犯罪者だ。 入江を牢獄行きにして、悟史と沙都子を保護してもらう。 …あきらめていた未来への希望が生き返るのを感じた。 山に紅葉が広がった頃だった。 「ご主人様。」 三時のお茶の時間。 沙都子は、できる限り自然に聞こえるように祈りながら、入江に声をかけた。 「今日のお買い物に、私も連れていってくださいまし。」 甘えるように、でも不自然に媚びる気配は含ませないように。 さんざん練習した声音で本番に挑む。 入江が少し不思議そうに沙都子を見た。彼が口を開くまでの数秒が、沙都子には ひどく長く感じられた。 「…構いませんが、どうして?」 「たまにはお出かけしたいですわ。ご主人様の側からは離れませんから…。」 緊張で背中に汗がにじんでくる。 「…でも、沙都子ちゃんの服は、それ以外はありませんよ。」 メイド服。 こんな服を着た沙都子を連れていたら、目立って仕方がない。 「大丈夫ですわ。ヘッドドレスとエプロンを脱いだら、普通のワンピースですもの。」 それでも、黒スーツの入江と並んだら、まるで葬式帰りの父娘のようではあろうけど。 「そうですね、では、お茶が済んだら出かけましょうか。」 「ええ。」 最悪、今回は成果を出せなくても良かった。 連れ歩いても平気だと思わせたら、今後の買い出しに付いてくのが容易になる。 カップを洗って、エプロンとヘッドドレスを外す。 軽く髪を整えて出て行くと、入江は車の前で待っていた。 真っ黒なスーツにサングラス、と、どう見ても明るい職業の風体ではなかった。 「お待たせしましたわ。」 「いえいえ。」 助手席に乗り込もうとした沙都子を、入江がとめた。 「沙都子ちゃん、何か忘れ物をしていませんか?」 「…いいえ?」 心臓が大きく脈打った。 (大丈夫。動揺するな、北条沙都子) 「では、何か、置いていかなければいけない物を、持ってきていませんか?」 「いいえ。」 言い切る。 気弱な態度は、余計に疑念を抱かせる。 「分かりました。」 入江の口元が笑みを作る。 「両手を上げて下さい。」 「か、ご主人様?」 「両手を上げて下さい。」 (気付かれてる?) 演技の笑顔を貼り付けたまま、沙都子は手を上げた。 入江は両手で、ぽふん、と沙都子の体を叩いた。 空港の職員が乗客のボディチェックをするときのような、そんな動きだ。 ぽふん、ぽふん、ぽふん。手が止まる。 彼は沙都子のポケットに手を入れ、中から薬を掴みだした。 「これは?」 予定していた言い訳を口にする。 「帰るのが遅くなってしまったら、外で飲まなくてはいけないでしょう?」 「沙都子ちゃんが持って行かなくても、私が持っていますよ。」 入江は、沙都子が所持していた薬の種類を確認し始めた。 サングラスが邪魔で、彼がどんな表情をしているのか分からない。 「そうでしたの? お聞きしたらよかったですわね。」 「どうして、一回分ではなくて、どれもシートで持ってきているんですか?」 「急いでいましたから、切ってくる余裕がありませんでしたの。」 「注射は? どうしてケースから出したんですか?」 「かさばりますもの。」 「注射も、出先で使うつもりで、持って来たんですよね?」 「ええ。」 「針なしでどうやって?」 「あら…ケースから出したときに、忘れてしまったみたいですわね。」 入江は沈黙した。 それが、沙都子にはひどく居心地が悪い。 彼がサングラスの向こうで何を考えているのかが読めない。 信じようと迷っているのか、あるいは裏切りを確信して自白を待っているのか。 「…沙都子ちゃん、手は、下ろさないんですか?」 「え? あ、もう、よろしいんですのね?」 下ろすとき、緊張しきっていた腕がごまかしようもなく震えた。 沙都子は喉まで出かかった悲鳴を飲み込んだ。 入江がゆっくりと深呼吸する。 「私の部屋に行ってください。」 「…はい。」 ばれた。 きっとばれた。 膝が震える。 これから多分、今までよりもずっとひどいことをされてしまうのだ。 逃げ出したいと思ったとき、悟史の部屋の窓が視界に入った。 (…駄目ですわ) 沙都子の体から震えが止まる。 彼女は殉教者の目で館に戻った。 どこにいたらいいのか迷った末、沙都子は入江の部屋の中央に立っていることにした。 しばらくして彼が入ってきた。 「お待たせしました。」 「いいえ。」 入江は椅子に座り、向かいのベッドを示した。 「どうぞ。」 「はい。」 背筋を伸ばして、ソファ代わりに座る。 沙都子はそのベッドに対して嫌な記憶しか持っていなかった。 入江のベッドの上では、いつもいやらしい事をされる。 「最初に言っておきますが、これからあなたが答えることを、私は疑いながら聞きます。」 「はい。」 当然だ、と沙都子は思った。 「あれをどうするつもりでしたか?」 自分で使うつもりだった、という言い訳はもう通用しないだろう。 今から別の理由をでっち上げるにしても、考える時間で嘘だとばれてしまう。 「上手くいきそうでしたら、警察か病院に届けるつもりでした。」 「そうですか。」 入江はサングラスを外し、普段の眼鏡をかけた。 今日はもう出かけるつもりはないらしい。 「届け出たら、助けてもらえると思ったんですね。」 「はい。」 入江も、北条鉄平のようにこぶしで殴るのだろうか? 沙都子は彼の手を見つめる。 「きちんとお話しておかなかった私にも非はあります。」 …殴らないのだろうか? いいや、期待をしてはいけない。 「警察にも病院にも、組織の人間の手が回っています。駆け込んでも、沙都子ちゃんが 思うような結果にはなりません。」 「…はい。」 本当か嘘か分からない。 そこまでの力がなくても、牽制のためならそのくらいは言うだろう。 だが、雛見沢をまるごと一つ潰せるような組織なら、本当に可能なことかもしれない。 沙都子が沈んでいると、入江が苦笑した。 「結構ぎりぎりなんですよ。沙都子ちゃんの存在が表に出ると、私も消されるんですから。」 沙都子は、入江の言うことが変だと思った。 「どうしてですの? ご主人様は、その人達の仲間なのでしょう?」 「仲間、とは言えませんね。私は所詮、道具ですから。」 投げやりな言葉とは裏腹に、入江の表情はにこやかだ。 「それも、もう使って済んだ、あとは捨てるだけの道具です。今殺すと目立つから、 ほとぼりがさめるまで延命されているだけですよ。沙都子ちゃんの事があってもなくても、 いずれ私は殺されます。私は大災害の真相について知りすぎている。」 「でも…それじゃあ、どうして計画に乗ったんですの?」 自分も殺されると分かっているなら、雛見沢を裏切る必然なんてなかったはずだ。 「危険な計画がある、って村の皆さんにお話して、皆で戦えば良かったんですわ。」 北条沙都子の言うことなら、雛見沢住人は聞いてもくれなかっただろう。 だが、入江は違う。彼は村の名士だ。どんなに荒唐無稽な話でも無碍にはされないだろう。 最悪でも、その情報を全国に広めれば、組織とやらも手を出しにくくなる。 「そうですね…計画について説明するには、他にも話さなければならない秘密があったんです。」 入江が窓の外に目を向けた。 傾きかけた太陽が、世界を金色に照らしていた。 「…私は、これでも昔は、日本でもトップクラスの脳外科医と言われていたんですよ?」 彼は少し得意そうだった。 微笑んだ表情のまま、かすかにうつむく。 「私は、正しいことをしてきたと思っています。心の底から、患者さんを助けたかった。 …でも、それが全部間違いだったと言われてしまったんです。」 入江の表情は崩れない。 子供から老人まで、雛見沢の患者たちを安心させていたあの微笑だ。 「誰一人、私が正しかったとは言ってくれませんでした。私の治療に感謝して、涙を 流してくれた人たちだって、肯定してはくれませんでした。…毎日毎日、何かしらの 恨み言が届いたんです。かつては私を神だと言ってくれた人から、鬼だ、悪魔だ、と。 電話や、手紙や…あらゆる手段で非難されました。」 入江は微笑んでいる。 …本当に? 「罪には問われませんでした。当時は正当な治療法と認められていたから、と。 でも、皆さん私のことを罪人だと思っていた。」 口の端を上げて目の端を下げたら笑っているように見える。 ただそれだけのことだと、沙都子は理解した。 そんな風に、見た目だけの笑顔を作れる人のことを、沙都子は知っている。 悟史だ。 苦しみを自分の内側にため込んで、誰にも偽物だと気付かれない笑顔を浮かべていた。 沙都子は入江の行った治療というものが、本当は正しかったのか間違っていたのか なんて分からない。 ただ、彼の傷がどんな風に痛むのかは知っていた。 投石に割れる窓ガラス、まき散らされたゴミ、聞こえるようにささやかれる陰口。 自分が悪かったと思ったなら、それを受け止めることはできただろう。 例えば、食器を割って怒られた。それなら自分の失敗を認めて反省すればいい。 でも、沙都子が「北条」沙都子であることは、沙都子の責任ではない。 理不尽な迫害は全て、沙都子の存在そのものの否定でしかなかった。 自らの正義を信じた入江にとっても、迫害は存在への否定でしかなかったはずだ。 「私は心から雛見沢を救いたいと思っていました。でも、駄目になってしまったんです。 せめて、あと五年あれば…。沙都子ちゃん。」 「…はい。」 「生きた人間を何人も切り刻んで、それでも結果を出せなかった医者を… 雛見沢は許したでしょうか?」 病気が原因で大量殺戮が起きると警告するなら、その病気が本当に存在するという ことも説明しなければならないだろう。資料の中に、生体解剖を行ったという 記録があれば、それが雛見沢のためであったとしても…。 …入江はたぶん、本当に雛見沢のことが好きだったのだ。沙都子はそう思う。 好きだったから、拒絶されるのに耐えられなかった。 助けて「鬼」と呼ばれるのか、見捨てて「神」と記憶されるのか。 こんな、笑い方さえ忘れてしまった人間に「鬼」であれと強いるのは、沙都子にはできない。 「…監督は、今、幸せでして?」 「いいえ。」 許したいと思った。 ベッドから立ち上がる。 窓の外はすっかり夕焼けで、室内は温かい柿色に染まっていた。 黒いスーツ姿の入江と、黒いワンピース姿の沙都子が向かい合う。 それはまるで葬式帰りの父娘のようだ。 あれから3ヶ月、二人は毎日喪服を着ていたのだと、沙都子は理解する。 椅子に座る入江の元へ歩み寄る。 かつて兄がしてくれたように、梨花がしてくれたように、沙都子は入江の頭を撫でた。 彼には多分、悟史のような兄も、梨花のような親友もいなかった。 入江はひどく驚いた顔で、沙都子の事を見上げていた。 彼は呆然としていたが、あの頃の沙都子のように泣いたりはしない。 (可哀想な人…) 入江は多分、どうやって泣いたらいいのかを知らない。 入江が沙都子の体に腕を回す。 反射的に沙都子の体がこわばった。どうにもならない恐怖心に、体が震える。 それでも彼女は、彼の頭をなで続けた。 「…好きにして下さいまし。監督のしたいように。」 沙都子は、いやらしいことをされるのは嫌いだ。 けれど、それが入江の慰めになるのなら我慢してもいいと思った。 ▼ その日、沙都子は初めて入江のベッドで眠るだけの夜を過ごした。 「ん…? おはようございます。」 入江が動く気配に、彼女は目を擦りながら体を起こした。 「あ、起こしてしまいましたか、すみません。」 「いいえ。」 入江はベッドの上で、手探りで何かを探しているようだった。 沙都子はベッドから下りると、机の上の眼鏡を取って差し出した。 「これですの?」 「…そんなところにありましたか。」 彼は苦笑して眼鏡を受け取った。 沙都子は両手を組み、ぐっと伸びをした。 ワンピースのまま寝てしまったせいで、あちこちがごきごきする。 それはスーツで寝ていた入江も同様で、肩や首筋を揉みながらうめいていた。 「…玉子は、スクランブルで?」 「はい、それで。私は、悟史くんのお世話をしてから下ります。」 「お願いしますわ。」 とりあえず新しい服に着替え、調理場に移動する。 昨日の買い出しが中止になってしまったので、食材の残りは少ない。 「うー…。」 他に適材がなく、沙都子はスープの具にカボチャを選択した。 調理をしながら、沙都子は昨夜の事を考える。 いつもは、沙都子が嫌がっている事を知っていても強いてくる。なのに、昨日は 沙都子が許可したのに何もされなかった。 (…別に、いやらしいことをしたかった訳ではありませんの?) 平均より発育はいい方かもしれないが、それでも沙都子の体つきは年齢相応だ。 嫌がる事をしたかっただけで、性欲自体は感じていなかったのかもしれない。 そう考えると、沙都子は昨夜の自分の発言が恥ずかしくなった。 (あああ、私、自意識過剰すぎますわ!) 鷹野のように見事なプロポーションをしているならともかく、こんな貧相な体で 好きにしろ、もないものだ。 (消したい! 監督の記憶から昨日の言葉を消してしまいたいですわー!) 動揺しながら作った朝食は、普段よりも塩分過多だった。 スープに口を付けた入江は、一瞬、微妙な顔をした。 「…ごめんなさい、失敗してしまいましたわ。」 食べられないほどではなかったけれど、出来がいいとは言い難い。 「いえ、美味しいですよ?」 「気休めはやめて下さいまし。自分でも分かっているんですから…。」 「いいえ、沙都子ちゃんの作るものは、どれも美味しいです。」 入江は笑って、本当に美味しそうに食べてくれた。 そういえば、今まで入江は沙都子の料理を残したことはない。 「…どうして、私でしたの?」 入江は、何が、とは聞き返さなかった。 「昨日、一晩考えて思い出しました。沙都子ちゃんが好きだったから、連れてきたかった。」 「…好きなら、どうして優しくして下さいませんの?」 「すみません、好きだって忘れていたんです。これから、優しくしてもいいですか?」 懇願するような口調に、沙都子は苦笑した。 「ええ。…でも、そんな大事なこと、もう忘れないで下さいまし。ぼんやり屋さんの にーにーだって、忘れたりしませんわよ?」 「はい。」 「あと、大人の女の人の代わりにするのも、なしですわ。」 「え? あ、ああ…。」 即答しない入江を警戒する。 「…本当に、嫌なんですのよ?」 「はい、それは、もう。…ただ。」 「ただ?」 「代わりじゃなくて、沙都子ちゃんだから抱きたかった、んです…。」 長い長い沈黙の後、沙都子は気力を振り絞って口を開いた。 「監督、それは犯罪ですわ。」 すでに、いろいろな意味で犯罪者ではあるのだが。 「そうじゃなくて真剣に、16歳になったらプロポーズしようと思っていたんです。 結納して、入籍して、ちゃんと手順を踏んで…。」 「プロポー…。」 沙都子は言葉に詰まった。顔が赤くなる。 「そ、それなら! ここでだって、16まで待って下さいまし!」 途端に、入江の表情が曇った。 「16歳は…遠いです。沙都子ちゃんの次の誕生日まで生きているかも分からないのに。」 「あ…。」 残された時間は、沙都子が思っていたよりもずっと少なかった。 それでやっと、沙都子は現実を受け入れることができた。 二度と目を覚ましてはいけない悟史と、生きることを諦めている入江と、沙都子と。 3人だけの世界は、内側に向かって静かに閉塞していった。 ▼ それはつまり、存在していないはずの時間だった。 北条悟史、昭和57年6月24日、失踪。推定死亡。 北条沙都子、昭和58年6月24日、失踪。推定死亡。 入江京介、昭和58年6月24日、死亡。自殺と推定。 これが既に決まった結末だ。 真実を訴え出て緊急に消されるか、ここでゆっくり死を待つのかの違いはあったけれど、 3人の記録が書き直しされることはないだろう。 見るはずのなかった雪を手のひらに受けて、迎えるはずのなかった春を過ごして、 沙都子は与えられた猶予を懸命に生きた。 「今年は、冷夏なんですって。」 ベッドの傍らで、沙都子は悟史のためにリンゴをむいていた。 「にーにーは暑いのが苦手ですから、喜んでますかしら?」 悟史は眠っているが、すり下ろして口に入れれば、少しずつ飲み込んでくれる。 「私は、夏はやっぱり暑い方が好きですわね。」 しゃりしゃりとリンゴを下ろしながら、沙都子は穏やかな口調で話し続ける。 「だって、暑くないとアイスが美味しくないでしょう? にーにーは…。」 その時、背後に人の気配を感じて、沙都子は悲鳴を上げた。 立ち上がった拍子に椅子が倒れる。 取り落としたリンゴと下ろし器が、汚れを散らして床を転がった。 「…あ、監督?」 「す、すみません。」 下ろし器を拾おうと身をかがめた入江から逃げるように、沙都子は数歩後ずさった。 「脅かすつもりは、なかったんです。」 「え、ええ。私の方こそ、ごめんなさい。」 「いいえ、雑巾を取って来ますね。」 怒った様子もなく、入江は下ろし器とリンゴを拾って出て行った。 沙都子は入江を許したけれど、沙都子の体はどうしても入江を受け付けない。 目の前にいて、彼が敵ではないと言い聞かせていれば、ふざけ合うような会話もできる。 だが、さっきのように突然気配を感じたり、どんな形であっても彼の手に触れられると、 忘れることのできない恐怖と嫌悪感とかわき上がってくる。 それは死ぬまで消えない記憶なのかもしれない。 せめて夕食は、入江が好きな物を用意した。 どうにもならない事ではあるが、沙都子は、過去の出来事を咎めるような態度を 取りたかったわけではない。 「今日も美味しそうですね。…ありがとうございます。」 気持ちが入江に伝わっていればいいと、沙都子は願う。 「…そうそう、明日買い出しに行きますが、何か欲しい物はありますか?」 「買い出し? 一昨日行ったばかりではありませんこと?」 「ケーキを、買ってこようと…。」 沙都子はカレンダーを見上げた。 「あ、忘れていましたわ。」 明日は沙都子の誕生日。実質的には、沙都子の一周忌。 (1年、生き残れましたわね?) …致命的に食卓を暗くしそうな感想は、胸の中にしまっておく。 「プレゼントは花を考えているんですが、他の物が良ければ…。」 他に欲しい物がないか、考えてみた。 梨花が欲しい、圭一が欲しい、レナが欲しい、魅音が欲しい、詩音が欲しい、 知恵が、校長が、クラスメイトが、健康な悟史が…。 …それを望めるのは、雛見沢で生きていた北条沙都子だ。 ここにいるのは死んでいる沙都子。死者には花を手向けるものだ。 「いいえ、お花がいいですわ。とびきり豪華な花束を下さいまし。」 「期待していてください。」 入江はグラスに口を付けた。 「そうだ、明日はとっておきのワインを開けましょう。甘口だから、沙都子ちゃんの 口にも合うと思うんです。」 「…私、未成年ですわよ?」 「ジュースで割って、度数を下げれば大丈夫ですよ。」 「監督がおっしゃる、とっておき、は、ものすごく高いんじゃありません?」 「…ん、まあ、それなりに。」 多分、ワイン好きの人間ならもったいないと思うのだろうけど。 「いいですわ、おつきあいします。」 「ありがとうございます。」 入江は、いつも患者に見せていた慣れた笑顔を作った。 それから一瞬だけ、引きつるような表情をした。 身を乗り出して頭を撫で始めた沙都子に、入江がとまどった声を上げる。 「…あの、沙都子ちゃん?」 「監督は、笑うのが本当に下手ですわね。」 「そんなことありませんよ…。」 反論はしたが、彼は沙都子の手から逃れようとはしなかった。 ▼ 「昼は要りませんので。」 「はい、いってらっしゃいまし。」 玄関で見送って、洗濯物を取りに行こうとしたところで、チャイムが鳴った。 「?」 今、鍵をかけて出たばかりなのに、忘れ物でもしたのだろうか? 「はい?」 沙都子は内側から鍵を外し、ドアを開けた。 そこにいたのは知らない男だった。 体格は入江とそう変わらない。作業服を着て、手には、プラスチック製の黒い…。 (スタンガン) 理解するのと、ばちっという衝撃は同時だった。 沙都子は声も出せずにその場に倒れ込んだ。 沙都子に電撃を与えた男は玄関を大きく開き、屋内に侵入してきた。 彼と同じ色の作業着を着た男達が、沙都子の脇を通り過ぎていく。 「あと1人いるはずだ。」 「二階を確認してこい。」 沙都子はうめきながら顔を起こした。 玄関の外で、ぐったりとした入江が引きずられていくのが見えた。 「…だめ、かんと…。」 伸ばした手が、彼に届くはずがない。 男が沙都子の上にかがみ込んだ。 「…あ?」 襟の中にスタンガンの先を押し込まれて、放電端子が首の肌に接触した。 ばちん、と視界が白く焼かれる。 そして沙都子の意識は黒い闇の中に落ちた。 <終> …ラストがちょっとぶち切りですが、マイルドに改稿した結果です。 初稿は鬱すぎるかな、と思い変更しました(下の方にのっけときます)。 今後の参考にしますので、よかったらアンケートボタンをポチってください。 (終了しました、ご協力に感謝) マイルドにして正解(or初稿は読んでない) 17票 いや、初稿の方向に駆け抜けた方が良かったよ 13票 思ったより拮抗してました。 どちらでもよければマイルド傾向、どうしても書きたければ鬱ルート。 で行きたいと思います。 <初稿あらすじ> ケーキを買いに出て、入江は東京に捕まって死亡。 沙都子はパニックから発症しかけ、それを押さえるために自分で注射する。 薬の副作用で眠り込み、目を覚ましてからダイニングに向かう。 明かりが付いているので、入江が帰宅した喜んで部屋に飛び込む。 そこにいたのは、薬が切れて目を覚ました悟史(拘束は引きちぎっている)。 沙都子を守る、と言いながら叔母(に見える妹)を撲殺する悟史。 このへん軽くスプラッタ。 数日後、別荘にやってくる山狗。 廃人状態で独り言を呟いている悟史と、沙都子の死体を発見(腐敗描写はなし)。 山狗は、死体袋二つと灯油を持ち込む。 エロはないです。 …大丈夫そうでしたら、下にどうぞ。 ▼ 入江を送り出した後。 いつも通りに家事を片付けて、簡単に昼食をすませて、3時のお茶の準備をして。 そして沙都子は、心の中に不安が芽生えたのを感じた。 (…まだ、3時ですわよ?) 帰っていてもおかしくはないが、帰らなくても心配するような時間ではない。 だが、芽生えた不安感は枝葉をのばし、沙都子の心を浸食していく。 (どうしましたの、北条沙都子。何がそんなに心配なんですの?) クールになれ、といくら繰り返しても、不安感は一向に納まるところを知らない。 (ただの買い出しですわよ? 監督はちゃんと、ケーキとお花を…) 「!」 不安の原因を理解した。 今日は沙都子の誕生日だ。 昭和57年に悟史が失踪した日だ。 叔母は死に、叔父は出て行った。 兄と二人だけで過ごすはずだった誕生日の夜。 悟史がくまのぬいぐるみを持って帰ってくることを、ずっと待ち続けていた。 一生懸命作った夕食は、唐揚げの味付けを少し失敗していて、 それでも悟史は喜んで食べてくれるだろうと思ってわくわくしていた。 日が暮れてきて、電灯を付けに行くタイミングを逃してしまって、 どんどん暗くなっていく部屋の中で、沙都子は泣いていた。 外を見る。 まだ明るい。 今は昭和59年で、昭和57年ではない。 …入江はきっと帰ってくる。 沙都子は大きく深呼吸した。 (大丈夫、大丈夫ですわ…) ごくりとつばを飲み込む。 心臓がどきどきしている。 もう一度つばを飲み込んだ。 (…気持ち悪い) 吐き気を感じる。 沙都子は紅茶の缶を出したまま、自分の部屋に行った。 机の引き出しから注射器のケースを取り出し、ワンピースをたくし上げて腹に打つ。 「ふー…。」 寝起きに1本打っているから、今日はこれで2本目。 基本的には入江の指示通りに打っているが、発症の予感がしたらすぐ使うように 言われていた。 (落ち着いて、落ち着いて…) ベッドに横になり、心を静めるために深い呼吸を繰り返す。 自分たちは1年も放置されていたではないか、と思う。 それを、何を今更…。 …。 …1年は長い。 それは組織が、ほとぼりが冷めた、と考えるのに十分では? どくん、と心臓が大きく鳴った。 「あ…あう…う。」 沙都子は口を手で押さえ、転げ落ちるようにベッドから下りて再びケースに手を伸ばした。 本当は、次の注射まで3時間は空けるように言われている。 だが、患者が急性発症した際に入江が使う注射は、この数倍の濃度の物だ。 成分的には、まだ上限までいっていないはず。 沙都子は迷いながらも、その日3本目の注射を打ち込んだ。 追加した治療薬が血管内を回り、体が冷たくなるような感覚に襲われる。 吐き気がおさまり、思考がぼんやりとして不安感が和らいでいく。 沙都子は安堵のため息をついた。 この感じは知っている。分校で倒れたときに、入江が注射してくれた時と同じだ。 目を覚ました時は診療所にいて、あのときは「貧血だったようですね」と誤魔化されたが。 沙都子はベッドに倒れ込んだ。 あのときと同じ、強い眠気を感じる。 治療薬を多めに注射した際の副作用らしい。 目を閉じると、彼女はすぐに深い眠りに落ちていった。 ▼ 目を覚ました沙都子は、ぼーっとする頭で目覚まし時計を手に取った。 カーテンが開きっぱなしだった窓からは十分な月光が差し込み、文字盤が読み取れる。 「…2時半?」 12時間近く眠っていたということか。 薬が効いているせいか、精神状態は落ち着いていた。 眠っていて夜の注射をとばしてしまったので、今打たなければならないかもしれない。 沙都子としては、発作予防の意味で打っておきたい。 だが、眠りに落ちる前に変則投与してしまったから、入江に相談してからの方が 無難かもしれない。 もし発症の予感がしたらすぐに対応できるように、沙都子は注射器のケースをポケットに 入れた。 廊下に出ると、階段の下から明かり漏れていた。 (監督!) ほら、ちゃんと入江は帰ってきた。 今年は昭和59年。昭和57年ではないのだから。 足音を押さえて驚かせよう、なんて余裕はなかった。 ただ、彼が帰ってきてくれたのが嬉しくて、沙都子は階段を駆け下りる。 「お帰りなさいまし!」 ダイニングに駆け込む。 人影がこちらを振り向いた。 沙都子の高揚は一瞬で凍り付いた。 「に、にーにー?」 眠っていなければいけないはずの悟史が、肩越しにこちらを振り向いていた。 やせた体で、こけた頬で、落ちくぼんだ目だけがぎらぎらと鋭い。 (にーにーが、どうして? …あ、夜の点滴交換…誰もしてない) いつもは入江がやっているけれど、帰ってこなかったのなら、沙都子がするべきだった。 自分の発作で手一杯で、隣室の兄の状態にまで気が回らなかった。 「…また、帰ってきたんだね?」 彼はため息をついて、くしゃっと髪の毛をかき回した。 沙都子は、彼の手首から血が出ているのに気付いた。 (拘束を…自力で?) 視線を下げる。 裸足の足首は、手首と同じように擦れて出血している。 拘束具は革製だった。だが、普通の人間に、それもこんな細い体をした人間に 引きちぎれるような物ではない。 それが可能だったとしたら、彼は、想像も付かないような異常な力を出したことになる。 「落ち着いてくださいまし…。」 ポケットの中でこっそり注射ケースを握りしめる。 これは悟史にも効くだろうか? 「うるさい!」 怒鳴りつけられて、沙都子はびくっと体を震わせた。 「あんたはいっつもそうだ。…帰ってくる。」 ダイニングのテーブルに、ワインの瓶が置いてあった。 悟史の手がそれを掴む。 「あ、それは!」 入江が、今夜開けてお祝いしようと言ってくれたワインだ。 「だめですわ!」 沙都子は思わず悟史の腕にすがりつこうとした。 瓶を振り上げた悟史は、躊躇なくそれを振り下ろした。 ガラスの割れる音がした。 頭部が痛い。頭から肩にかけて、沙都子の体をワインが濡らす。 沙都子は頭を抱えて、床の上でもがいた。 「痛っ、にー…。」 「殺しても、殺しても、あんたは帰ってくる!」 割れた瓶を、悟史は部屋の隅に投げ捨てる。 瓶が粉々に砕けて飛び散った。 悟史は部屋の中を見回して、花束をかかえた乙女のブロンズ像を手に取った。 その像の顔立ちは少し沙都子と似ていた。 「死ね! 死ね! 死ね! 僕たちの前に、二度と現れるな!」 悟史の攻撃に、沙都子の体が容赦なく破壊されていく。 「にー…にぃ、待っ。」 「沙都子は僕が守るんだ!」 …その言葉に、沙都子はもう抵抗できなくなった。 悟史をここまで追い詰めたのは自分だ。 そして今でも、彼を追い詰めた沙都子を守ろうとしてくれている。 沙都子はそろそろと片腕を上げた。 よく、眠っている悟史にしていたように、その頭を撫でてあげたかった。 伸ばした腕が、折られた。 ▼ 山奥の別荘の前で、白いワゴン車が止まる。フロントガラスが初夏の光を反射して キラキラと輝いていた。 揃いの作業服に身を包んだ男達が車から降り、別荘の玄関に近付いていく。 「しっかし、たかが場所の特定に、ずいぶんかかったな。」 「ああ、入江のセンセーが強情だったってよ。」 「例の新薬使ったとか、使わないとか。」 「はぁ? 素直に吐いときゃ、センセーももうちょっと楽に死ねたのに。」 「こっちにお気に入りのモルモットがいたんだろ?」 先頭の男が玄関を開けようとして鍵に阻まれた。 ポケットからキーホルダーを取り出し、何度か間違えたあと正しい鍵を見つけ出す。 ドアを開け、足音を忍ばせて屋内に侵入した。 そっとドアを開けて室内の様子をうかがった男が、おもしろくなさそうな声を上げる。 「…なんでえ。」 昼前の明るい光が差し込む部屋の中には、ろくな獲物はいなかった。 ついて入ってきた男達も、彼と同じ感想を抱いているらしかった。 予定されていたターゲットは2人。 少女の方は床の上で死んでいた。 少年の方は壁にもたれかかってうつむいていた。ひどく衰弱した様子で、ぶつぶつと 何かを呟いているのでなければ、こちらも死んでいると判断していたかもしれない。 「おい、死体袋2つは、持ってきてるだろうな?」 「はい。…自分は、二階に灯油をまいてきます。」 少年はうつろに床を見つめて独り言を続けていて、彼らの声には反応しなかった。 男の一人が近付く。 「油断するなよ。」 「ええ。ちょっと、何言ってるのかと…。」 少年の声を聞き取った男が吹き出した。 不思議そうな仲間達の視線に、彼は自分の頭を指さしてくるくると回して見せる。 仲間達が笑った。 笑いが納まると、男はテーサー銃を少年の胸に押し当てた。 ▼ 昭和59年 6月26日 正午ごろ、×県 鹿骨市の山中の別荘で火災が発生しているとの匿名通報あり。 所有者の女性(38才)は、別荘はここ数年使用していなかったと証言している。 同日近辺では不審火が多発しており、警察では同一犯による放火とみて調査を 続けている。 <終>
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最近、魅ぃちゃんの様子がおかしかった。 笑う時もどこかぎこちないし、元気が無い。 理由は分かっている。 …たぶん、私と圭一君の事。 魅ぃちゃんが圭一君を大好きなように、レナだって圭一君が大好き…ううん、愛してる。 だから、何も言えなかった。 励ます事も出来ない。 応援だって出来ない。 謝られたら余計に腹が立つだろう。 ただ、その事については触れず魅ぃちゃんの心の傷が癒えるのを待つだけ。 レナも魅ぃちゃんも、正々堂々と戦った。 それをふまえて圭一君はレナを選んでくれたのだし、魅ぃちゃんも言ったように 「どっちが勝っても恨みっこナシ」だ。 けど――――― やっぱり魅ぃちゃんの前では、どこか引け目を感じてしまう。 やましい事なんてしてない。 だけど裏切り者と罵られるのが怖かった。 だから、こうして圭一君と2人っきりでいられる時間はとても落ち着く。 心の奥のモヤモヤとか、わだかまりとか、そういったものを全部忘れる事が出来た。 頭を撫でる手が好き。 サラサラの髪が好き。 優しげな瞳が好き。 ずっとこうしていたい――― そんなレナの願いは、魅音の声によって遮られた。 「ひゅーひゅー、お二人さんアツいねぇ。おじさん妬けちゃうなぁ~?」 魅音はニヤニヤと薄く笑いながらドアの前に立っていた。 …否、あれは笑ってると言っても良いのだろうか。 口だけは不気味につり上がっているが、その目は全く笑っていない。 「…魅ぃちゃん……」 「み、みみみみ魅音ッ!?お前、なんでここに!」 さーてね、と曖昧な返事を返し、魅音はつかつかと圭一たちの方へと近づいていった。 圭一は顔を真っ赤にして何かブツブツ呟いている。 この鈍感男―――魅音はありったけの憎しみをこめて圭一を睨むが、それすらも気付いていない。 レナにも皮肉を込めた視線を送ったが、目を反らされた。 「いやぁ、おじさん参っちゃったよ。忘れ物取りにきたら、二人がしっぽりやってんだもん。 ごめんだけど一部始終見せてもらったよ?悪いね~!」 「んな、魅音、おま…ッ!!」 「…は、はぅ…魅ぃちゃん…」 顔を赤らめてうろたえる2人。 ―――白々しいよ、レナ。 作戦なんでしょ? 「ふ…ふふふ……くっくっく、あーはっはっはっは!」 笑いが止まらない。なんて滑稽なのだろう。 圭ちゃんもレナも、そして私も。 そんな私をおかしく感じたのかレナと圭ちゃんが不思議そうに覗き込んできた。 蘇る、先ほどの光景。 「………すごかったよ~?2人とも。 バカみたいに夢中でさ!圭ちゃんなんて腰振りまくりで動物みたいにサカってて! レナもレナだよ、あんあん言っててバッカみたい。 あっははははおかしいねーおじさん傑作だわ! ね、もっかいやらないの?やってよ、ねえ、ねえ、ねえ!! ねえってば聞いてんのか2人ともォオオッ!!!!」 ガッシャァアアン! そこらにあった机を蹴り飛ばす。 いきなりの事で二人は唖然としたが、すぐに我に返った圭ちゃんはかばうようにしてレナをぎゅっと抱きしめた。 それが余計に腹ただしくて、さらに椅子も投げ飛ばす。 ちょうどそれが頭にヒットしたらしく、圭ちゃんは呻いてずるりと倒れ込んだ。 額から血が流れている。良い気味だよ、私だってずっと血が流れているんだ。心の傷口から。 「圭一君、けーいちくんッ!?しっかりして……っ! …ね、魅ぃちゃん…どうしちゃったの?らしくないよ…ねぇ、魅ぃちゃん…っ!」 レナが悲痛に訴えてくる。 うるさい。うるさいうるさいうるさいっ!! 「ねえレナ、らしくないって何?どうすれば私らしいわけ? それに私は魅音じゃない!鬼、鬼なんだよぉお!!」 はあ、はあ、はあ。 肩で息をする。 振り回していた椅子を下ろし、へたりと座り込んだ。 圭ちゃんは相変わらずぐったりして動かない。でも死んではいないはずだ。 レナはもう先ほどのような悲痛な顔はしていない。 どちらかと言うと怒ったような顔だ。 ただ無言で圭ちゃんを抱きしめながら私を睨んでいる。 「ん~?圭ちゃんが気絶したからって本性表すわけぇ? 女っておっかないね~、おじさんには出来ない芸当だわ。あっはっは!」 「…違うよ魅ぃちゃん。魅ぃちゃんは間違ってる。 …圭一君が、好きなんでしょ?だったらこんなやり方…」 「うるさい、裏切り者は黙ってて!」 レナが裏切り者、という言葉にびくりと反応した。 先ほどまでの揺るがない瞳はもう無く、バツの悪そうな顔になっている。 「…ふーん、一応自覚はあるんだ?裏切った、ていう」 「…っ違うよ!!…魅ぃちゃんだって、言ったでしょ…?正々堂々と勝負しようって、だから……」 「嘘つき」 私は知ってる。 レナは圭ちゃんを誘って宝探しに行ったりピクニックをしたりしてた。2人きりで。 そんなの抜け駆けだ、ずるい…そう思ったけど、その時はぐっとこらえて何も言わなかった。 今思えばその時何か言っていれば未来が変わっていたかもしれない。 もしかしたらレナと圭ちゃんは付き合わなくて、私と圭ちゃんが付き合っていたかもしれないのだ。 そうだ。きっとそうだ。 本来ならば、圭ちゃんの隣にいるのはレナでなく私なんだ――― 黒い感情が渦巻く。 …*してやろうか。いや、それは流石にまずいか。レナを*せば、圭ちゃんも*さなければならなくなる。 それよりもっと効果的で合理的な方法――――― ………あった。 にやりと微笑む。 ぐちゃぐちゃに汚してしまえばいい。私の手で。 そうと思いついたら話は早い。 レナは俯いて微かに震えていた。泣いているのだろうか? いや、そんなはずはない。それもまた計算だ。圭ちゃんが起きた時、私を悪者にするための。 魅音は音も無くレナの後ろに回り込み、素早く腕をねじりあげた。 レナは一瞬の出来事に目を見開いたが、すぐにジタバタと暴れる。 いくら女同士といえど、体格、身長、経験のどれをとっても魅音にはかなわないレナはすぐに押さえこまれた。 「婆っちゃに教えこまれた技がこんなとこで役に立つなんてね~」 ひゅうと口笛を吹きながら、そこらにあった縄でレナの手足を縛る。たぶん沙都子のトラップに使ったものだろう。 あっというまにレナは縛り上げられ、いわゆる“M字開脚”の格好になった。 「あれ、もしかしてパンツ濡れてる?おじさんの見間違いかなぁ~?」 「…………っ……」 先ほどの圭一との行為が仇となったのだろう。 レナのそこはまだ熱を帯び、じんじんと疼いていた。 「ひあっ!?」 つ、と魅音がそこに触れる。 布越しにも関わらずそこは濡れていた。 「あはは、びしょびしょじゃん。淫乱だねぇ~。あ、切るよ、これ邪魔だから」 ちゃき、とそこにハサミをあてがう。 歯の冷たい感覚にレナはびくりとはねた。 「や、切っちゃダメ、魅ぃちゃ…」 じゃきん。 レナの抗議もむなしく、秘部を隠していた布一枚はあっさりとはぎとられた。 レナの秘部が視線にさらされる。 「うわー、ひくひくしてるよ。おじさんカンドー」 「……ぁ、あう…見ないでぇ…………」 レナのソコは可愛らしいピンク色でひくひくと震えていた。 いやらしくダラダラと涎をたらしながら、ぷっくりとした肉芽が痛々しいほど赤く腫れ上がっている。 「おじさん、な~んもしてないよ?…もしかして、見られてるだけで興奮しちゃ った?視姦ってやつ!?あっははは!」 「……ふ、あ……っく」 顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに俯くレナ。 ……本当、悔しいぐらい可愛いなあ。どう汚してやろうか、くっくっく! 「………、ぅ………」 と、そこで圭ちゃんがもぞもぞ動いた。 目を覚ましたらしい。 レナが顔を強ばらせる。 ちょうどいい。見せしめだ。 「圭ちゃん、お目覚めー?」 「……魅音…?…あれ、体が動かな……………レナ!?レナ、大丈夫か、レナ!?」 「…け……ぃち…く…」 ようやく自分の置かれている状況に気づいたらしい。 まーったく、レナレナうるさいなぁ圭ちゃんは。 わざとらしくため息をついてレナをチラリと見る。 レナは恥ずかしさのせいか、涙をポロポロと流していた。 ――――ふん。被害者ぶってるんじゃないよ。私だって辛いのに。 「圭ちゃんはそこで見ときなよ。おじさんがたっぷりレナを虐めてあげるからさ!」 「魅音、やめろ、レナには何もするな!」 圭ちゃんの声を無視し、私はレナの制服に手をかける。 縛っているから脱がせない。 そんなのお構いなしに私はびりびりと引き裂いた。レナの白い肌が段々と露わになっていく。 …レナは、何も言わなかった。 ただ悲しそうに私を見つめていた。 その様子を見ていられないとばかりに圭ちゃんが叫ぶ。 「なぁ、どうしちゃったんだよ魅音……! 本当のお前はもっと、面白くて…良い奴で……俺の最高の友人じゃなかったのかよッ!?」 ―――――最高の友人。 なんて素敵で、なんて残酷な響きなのだろう。 私は自嘲するように笑った。 「は、友人ねぇ…。言っとくけど圭ちゃん、私は圭ちゃんを最高の友人だなんて思った事、一度も無いよ」 「そんな、なんでだよ、なん…」 そこで圭ちゃんの言葉は途切れた。 ………私が塞いだからだ。 圭ちゃんは驚いて目を見開く。レナは目を反らす。 私は唇の感触を充分に堪能してから、ゆっくりと唇を離した。 「……ずっと、好きだった。 “最高の友人”じゃなくて、“1人の女の子”として。」 「…、……みお………」 転校してきた時から、ずっとずっと、大好きだった。 「ごめん、魅音。俺、気付かなくて…でも……」 「おっと、勘違いしないで。圭ちゃんを好きだったのは確かに園崎魅音だけど、ここにいるのは鬼なんだから。 ……鬼だから、あんたたちをめちゃくちゃにしてあげる」 私がそう言うと、圭ちゃんは、ひどくショックを受けたような顔をしていた。 今の私は園崎魅音じゃないとはいえ、圭ちゃんの事が好きじゃないと言えば嘘になる。 でもそれ以上に憎しみが大きかった。 そ、とブラ越しにレナの胸に触れる。 レナはかすかに声をあげるが、下を向いているため表情が見えない。 「うん、やっぱこれくらいの大きさが良いよね。おじさんくらいになると肩こるんだよ~」 そう言いながらブラを上にずらす。 レナが小さく悲鳴を上げた。 生娘じゃあるまいし、今更純情ぶっても。 「は、ぁう、っふぅ…!」 「くっくっく、かぁいいねぇレナは!乳首立ってるよぉ?」 後ろから抱きしめるようにして、乳首をコリコリとつまむ。 片手をスカートの中に忍ばせた。パンツはさっき切り取られたので、秘部を守るものは何も無い。 くちゃ… 「うわー大洪水。レナ、興奮しすぎ!」 「あ、ダメ、魅ぃちゃんやめてぇっ!!や、あ、あぁあああっ!!」 そこはしっかりと潤っていて、魅音の指をすんなりと受け入れた。 ぬぽぬぽと出し入れするいやらしい音が響く。 時折肉芽をつまんでやると、電撃でも走ったかのようにビクリとはねるのが面白い。 だんだんと指を加速していくにつれ、レナの嬌声が一層大きくなっていく。 後ろで圭ちゃんがやめろと叫んでいる気がした。 「さあさあさあッ、とっととイっちまいな、レナぁああッ!!!」 「あっ、いやっ、いやぁ、んあぁあああああっ!!!!」 ぷしゃあっ… 盛大に潮を噴いて、レナはイった。 レナはもう泣いていない。 呆然としながら、顔を赤らめてはぁはぁと息を荒げている。 私はその指をペロリと舐めて、レナの顎をくいと持ち上げた。 「気持ちよかった? ……………今度はレナが見る番だよ」 「…はっ、っは…ぁ…はぁ、…レナ…が…見る…?」 ―――――まさか! その言葉にレナは食いついてきた。 しきりにやめてと叫んでいる。 その言葉をやっぱり無視して私は圭ちゃんの元へと近づいていった。 「圭ちゃん、おまたせ。どうだった?好きな子の痴態を見た感想は。」 「………気分最悪だぜ。なぁ魅音、今からでも遅くない。こんな事、もう…」 あははだから私は魅音じゃないって。 そうケラケラと笑って圭ちゃんの股関に手を伸ばす。圭ちゃんは軽く呻いた。 そこは熱く、硬くなって、自己を主張している。 「この硬くなっているのは何かな?かな?…くっくっく!」 レナの口癖を真似てみた。圭ちゃんが顔を歪める。 「なんでだよ、魅音…」そう囁いた声が聞こえたが、おかまいなしに圭ちゃんに跨った。 カチャカチャとベルトを外す音、チャックを下げる音。 レナは極力見ないように目を瞑っていたが、それでも音だけはどうする事も出来なかった。 「おじさんもね、実はもうびしょびしょなんだ。 圭ちゃんも準備出来てるみたいだし………いくね?」 「やめ、魅音…!」 ずぶぶぶぶぅっ!!! 「うぁあ……っ!」 「あ、は…!圭ちゃんのおちんちん、おっきぃい…!あふっ、気持ち…あぁんっ!」 魅音は圭一の胸に手を起き、ゆるゆると腰を動かした。いわゆる騎乗位の体制だ。 腰を振る度に聞こえるいやらしい音にレナは顔をしかめる。 聞きたくない――――! 「あっ、ふぁ、んっ…すごい圭ちゃん、奥まで…奥まで来てるよぉおぉお!!!」 ずちゃ、にちゃ、といやらしい音が響く。 先ほどからレナの痴態を見せつけられていた圭一はもう限界だった。 「うぁ、ダメだ、魅音…ッ!やめろ、もう…!」 圭一は身を捩らせるが、魅音にのし掛かれてるために抜け出す事が出来ない。 それどころか魅音のナカをかき回すような形になってしまい、かえって快感が倍増してしまった。 「ぁっ、あ、っ…レナ、レナぁあっ!!」 「…ぁふっ、…ちょっとぉ……あんっ、今は…ん、…レナとじゃなく、て、…おじさんと……ぅあっ、…やってんで……しょっ!!!」 そうだ。 何かを思い出したかのように、魅音がイタズラに微笑む。 「ね、レナ。…おじさんね、今日、危険日なんだぁ…くっくっく。 ……子供の名前、何にする?圭ちゃん」 それを聞いたレナは顔を真っ青にする。 レナだけでなく圭一もだった。 「いやぁぁあああぁあ!!!!魅ぃちゃんお願いだからやめてぇぇえええぇえ!!!!」 「っく、あっ、…魅……音っ、頼むから……やめっ……うああああぁあぁああああ!!」 ズン、と魅音が奥まで挿入したのと同時に圭一は果てた。 …レナはすすり泣いている。 魅音は荒い息を整えて、ちゅぷ…と圭一のソレを引き抜いた。 白い液体がつつ、と糸を引く。 「……っふふ……くく……あはははははははは!あっはははははははは!」 笑った。気が狂ったように笑った。おかしくて仕方なかった。 ………これで圭ちゃんは私のもの。 もう誰にも渡さない。